白山への思いと、友への思い

2015年7月。石川県と岐阜県にまたがる、標高2,072メートル、日本百名山の「白山」に行くはずだった。


白山登山までのちょうど1週間前、右膝を滑って負傷し、翌日、膝専門のスポーツ外来のある病院を受診。レントゲンでは、骨は折れてもヒビも入ってなかった。歩きにくくなっている状況は今は凄く右膝が腫れているので、腫れがひいてくるのを待ち、MRIをやって結果を見てから、手術が必要か必要でないかを判断する事になった。歩行困難な状態だったので、松葉杖を借り、膝を冷やす事しか今はないらしい。

結果を受け、直ぐにK子にラインした。

「白山に向け、トレーニング登山しに、筑波山に行ったのですが…雨上がりで滑りやすくなってたので、下山はいつも通り慎重に降りてましたが、滑ってしまい、右膝の状態悪く松葉杖です。何とか下山しましたが、最後の山になるのに申し訳ない。M男さんと一緒に登って下さい。予定通り私も白山に行き、下山して戻って来るのを待ってます。私の事は気にせず、三大名山制覇して下さい。こんな機会はなかなかありません。M男さんいるから大丈夫。登って貰えないと、私が後悔します」

「えっ、膝大丈夫?延期でも良いよ」

「延期しても、今年は無理な気がするのでM男さんと登って。お願い」

「膝の痛みはどうですか?白山の事は気にしないで。白山に登る事が目的ではなく、一緒に登る事を楽しみにしていたので、一緒に登らない登山は、頑張って登ろうと言う気持ちになれません。だから、今回は中止にしましょう」

私は、何度かラインで連絡を取り合ったが、「一緒でなくては意味がない」と、言うK子の意思は固かった。それを受け、今度はM男さんにメールをした。

「トレーニング登山中に足を滑らせてしまいました。膝周りはパンパンに腫れて歩行困難な状態です。K子とは、何度もラインでやり取りしM男さんと登って来てと言いましたが、一緒でなければと言われ、宿も切符もキャンセルする事になりました。本当に直前で、私の不注意のために白山に行けなくなった事申し訳ありません。私が全て台無しにしてしまい、バカバカと何度言っても、気持ちおさまらず、後悔しかありません。一緒に白山に登るの楽しみにしていただけに、悔やんでも悔やみきれません。本当に申し訳ありません」

「白山は逃げたりしないので、膝が良くなったら又計画しましょう。気にしないで下さい」

K子、M男さんから優しい言葉を貰えば貰う程、自分には次がない思いが強くて悲しくなった。

そう思う程、自分の中では膝の状態が悪かったのだ。

2015年7月、筑波山。私は、最後かも知れない山行記録を山好きのサイトにアップした。滑ってズボンが汚れた写真もアップした。滑った後はお花の写真が多く、あの時まだ歩けたので、以外と冷静に行動し、普段は撮らないお花を見つけては撮っていた。「最後」の文字が頭をよぎっていたので、普段気にかけていなかったお花も愛おしく思えた。山で見るもの全てを記録したかった。そして忘れたくなかった。空気、土の感触。写真にコメントを付け終わり、最後に感想を書き、記録は終わった。

途中省略。「今回は下山時に滑り、昔痛めた足の膝を負傷しました。何とか下山しましたが、かなりやばい状態です。意気消沈です。無事に山行終えられず下山後のお蕎麦とソフトクリーム、色んな思い噛み締め、色んな事が頭をよぎる中、景色を眺め味わいました」

と、締めくくった。


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