今度は2人で雪山へ

2月の初雪山で分かった事、学んだ事。

チェーンスパイクを使用するにあたり、1,000メートル以下の低山は、雪があるところ、ないところと出てきて、ずっとチェーンスパイクを装着したままでは歩けない。脱着はかなり大変な作業だったので、それより少し標高のある山が良い。しかし、余りにも雪が深すぎると踏み跡も見つからず危険なので避けたい。さて、そんな都合の良い山はあるのか。

山好きの集まるサイトで、初心者でも登れる余り雪が深すぎず、それでいてチェーンスパイクを装着したまま脱着せず登れる雪山を探す。まずは毎週末決まってチェックする、フォローしているユーザーさんの山行記録を拝見する。私は6人フォローしてて、フォローした方がフォロワーになって頂いている。その中に正に私の探し求めていた山があった。

「ここしかない」と思った。

C男さんの山行記録によると、この山はスノーシューハイクのツアーなどもあり、雪山初心者向けで、山頂の展望が素晴らしいとの事。山頂手前山荘で「スノーシュー 」のレンタルもしてるので、雪が余りにも多い時はチェーンスパイクから山荘で「スノーシュをレンタルすれば良い」事も分かった。ここなら安心そうだ。途中に山荘があるのが心強い。

直ぐに、会社の昼休みにK子にその山行記録を見せてお伺いをたてる。

「良いね。景色も良さそうだし、ここに行こう」

2015年3月。今回は朝7時30分新宿駅発の特急に乗って、長野県北西部にある標高1,995メートルの「入笠山」へ行く事にした。

ゴンドラを乗り継ぎ、ゴンドラ山麓駅に到着。辺り一面白の世界。雪もふかふかのカーペットのように延々と敷き詰められていた。

「綺麗だね〜。辺り一面真っ白で気持ち良い」と、私は言い、

「天気も良くて良かったね。じゃ、行ってみようか」とK子が言った。

取り敢えず、登山靴だけで歩いてみると、雪で滑って歩き辛かった。ここで出番だ。

「K子、チェーンスパイク装着しようよ」

K子は初めてつけるので、前回使用した私は装着の仕方を伝授した。

さて歩いてみると、「ザクッ、ザクッ」雪に食い込んでいる。

「凄い、凄い。滑らない、歩きやすい!」

K子は、大感激していた。私も前回のチェーンスパイクの感触が戻ってきて、雪の量も違って今回の方が多いので、より一層心が雪を踏み締める音が心地良かった。心が躍った。

私は、膝を怪我して以来、スキーもスノボー出来ないので、雪を見る機会がほとんどなかった。だから思わず童心に帰ってしまう。視界も良く、周辺も見渡せる程の開けた雄大な白の世界を私達は進んで行く。

チェーンスパイクは快適で、歩く事が楽しかった。山頂手前の山荘に着いた。オーナーさんに山頂の状況を聞く。このままチェーンスパイクで行くか、スノーシューをレンタルするか悩んだからだ。結果的には、この雪の量なら、踏み抜きに注意していけばレンタルしなくても大丈夫との事。正に今山頂から降りて来た人が山荘に入って来たので、その方にも聞いてみたが同じく無くて大丈夫との事でだったので、このままチェーンスパイクで山頂目指す事にした。

山頂に近づくにつれは傾斜がきつくなり、先頭を登っていた私は後ろを振り帰る。K子は、下を向き、かなり疲れたご様子。

「ゆっくり自分のペースで上がってきてね〜」と、声を掛ける。軽く頰笑んだK子は、もはや言葉も出ないようだ。

山頂直下、傾斜きつく、チェーンスパイクでも雪が多すぎて食い込みが悪く滑り気味だったので、慎重に登った。

「山頂、到着!」

物凄く山頂は開けていて広かった。素手に20人近くの登山者の方がいた。

ちょっと遅れてK子が登って来た。

「K子、見て!この景色」

山頂は、360度の大パノラマ。2人で暫し「ボーっ」と「景色を眺めた」一周ぐるっと回ってみた。

秩父連山、八ヶ岳、富士山、北アルプス、中央アルプス、南アルプス。豪華な雪化粧した山並み。

「私、本当はもう辛くて、途中山荘に戻ろうかと思いながらここまで登ってきたの。でも、諦めないで良かった。この景色見れて良かった。連れて来てくれてありがとう」

「私の方こそ、一緒に登れて良かった。確かにC男さんの山行記録にも、山頂の眺めは良いとあったけど、これ程までとは思わず予想外だった」

八ヶ岳の連山の方面を見ながら腰を下ろし休憩した。心が清くなる。余りに美しさに何も考えずただ見惚れていた。

「寒い」

私は、ここまで登ってきてかなり汗をかいた。石に座って10分も休憩すると、身体は急速に冷え体温が奪われた。

先月の山より、標高が約1,000メート高いと、山頂で感じる空気、風の冷たさは違う。頭では分かっていたが、実際体感してみて身体で感じた。

帰りの高速バスの時間もあるので、最後にこの360度大大パノラマの景色をビデオ撮影し、下山する事にした。

帰りは高速バスの車中で、天気に恵まれ、2人で一緒に雪を踏みしめながら歩けた事、雪山の山頂から遠くの雪化粧した山並みの美しかった事、沢山沢山雪道を歩け、雪山を思う存分楽しめた事を、2人で振り返り話していた。

「K子、凄く満喫出来たね。思った以上の景色が山頂にあって大感激だったね」

「私、途中で諦めていたら、あの景色見れなかった。頑張って良かった」

頑張ったご褒美が最高の眺めでとても満足だった。




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