頭の中は山のスケジュール
2013年8月以降。下山すると次の山を探すようになった。1つの山を達成すると、次の山へ登りたくなる。完全にK子と2人で山にはまった。
大岳山の後、9月は奥多摩の川苔山、標高約1,363メートルへ、ここも人気の山である。「百尋の滝」が見たくてこの山を選んだ。滝幅もあり、水量も多く、冬は滝の水が凍っている写真がありとてもきれいだ。
まだ残暑厳しき9月。登山スタート開始から川を流れる水の音を聞きながら、幾つか大小の滝を見つつ、幾つもの橋も渡り、最後は鉄梯子を登って降りて、念願の滝へ辿り着いた。
「K子、凄いね!」
水量が多く、太くて力強い水の勢いある音がより一層迫力を増した。
「本当、来て良かった!」
2人して滝下の側まで近づき、水しぶきを浴び、マイナスイオンをたっぷり浴びる。
2人共、両手を広げて「気持ち良い~」と思わず声が出る。
9時にスタートしてから約2時間半、休まずここまで来たのでこの言葉しか出ない。滝周辺は大小の石があり、その一つの大きな石に腰掛け、しばし迫力のある滝を見ていた。既に20人近くの登山者がいた。中には滝の絵を描いている女性の人がいて、ちょっと拝見させてもらい、少しお話しをさせて頂いた。
滝の絵を描きに良く来るとの事だった。川苔山でなくこの滝が最終目的なのだ。
「同じ季節でも色んな滝の表情があり、又描きたくなるんですよ」
と、仰っていた。
「山頂目指すばかりが登山ではない。人其々の思いがあって登ってくる登山もあるのか」
1時前に山頂に着き休憩、ランチを食べていると、汗をかいていた身体が急激に冷えてきたので、早々に引き上げ下山する事にした。一気に冷えた身体だが、動けばまた暑くなった。今回、標高差約600メートル、登りは私達に初心者にはきつくて、前回の大岳山よりも息が上がった。スタートしてから下山まで、休憩含めて7時間半位かかった。今回は登りは奥多摩方面から入り下山は鳩ノ巣駅へと、違う景色を眺めながらのコースにした。たった数回しか山に行っていないのに、段々と欲望が出て来て、コースもなるべく同じ道は通りたくないので、色々考えるようになった。
段々降りてくると、標高も下がるので暑さが増してきた。下山して、まだ電車の時間に余裕があったので、駅の側のお店でかき氷を食べた。生き返った瞬間だ。
下山後の「かき氷」疲れが飛びました。
11月。東京を出て神奈川県と静岡県の境、箱根山の北西にある標高1,212メートルの「金時山」に行く。日本三百名山の1つで、名の通り「金太郎伝説」に名の上がる山である。この山は、お茶屋さんが幾つかあり、コースも豊富だ。あと何と言っても、富士山が近くに見える事。
普通の人気のコースでは面白くないので、登りは余り利用者の少ない静岡県足柄駅から9時半にスタート。無人駅で降りたのは私、K子含め3人だけ。下山は帰りのバスの都合の良い「金時神社入り口」。ここは多く使われる登山口で、登りは静岡県から入り、下山は神奈川県へと戻ってくるコースにした。
登山開始から山道より舗装路が多かった。失敗したかなと思ったが、このコースの見所は、突如やってきた。一旦山道っぽい道を歩き、今度は大道路に出て暫く車道歩きになった時、何気にガードレールの先の景色がどこまでも大きく開けている感じだったので、立ち止まって見ると、富士山の裾野がまじかに見えていたのだ。壮大だった。富士山の頂上は雲に覆われ見えなかったので気付くのが遅くなってしまった。富士山の全容を見る事は出来なかったが、裾野をこんなまじかに見た事がなかったので、これはこれでとても感動した。
ようやく山道にはいり、左右景色を見てみる。黒く厚い雲が広がっていて、その先は雨が降っているような感じだ。嫌な思い出が頭の中を過る。
「まさか、また雨?降られたくないなぁ」
K子と2人黙々と山頂目指す。無事に降られずに山頂に着いたが、ガスってしまって展望なかったのが残念。でも途中1回だけ登っている時に、富士山の頂上を見る事が出来、写真撮れたので良かった。
「K子、富士山見えてる。見えてるよ」
「本当だ。すっごいテンション上がる。見れて良かった」
暫くすると、雲の中には隠れてしまい見えなくなった。富士山を見れたのはこの1回だけだった。
富士山見れただけで、凄い力が湧いてきた。元気をもらった。
山頂に着いた。山頂は涼しく、寒くてじっとしているとブルブル震えてしまう。
お茶屋さんで温かいお蕎麦を注文し、店の中は混んでいたので、店の外のテーブルに腰掛けて待つ。待っている間に保温用のポットにK子がお湯を入れてきていた。そのお湯でドリップコーヒーをー私に入れてくれた。
「K子、美味しい!この寒い中で、山頂で頂くコーヒーは格別に美味しいね」
「良かった。今日は山頂でコーヒーを飲もうと思って準備してきたの」
「本当に有難う」
お蕎麦も出来て来て、まずお汁から頂く。コーヒーといい、お蕎麦の汁といい、胃に強烈に染み込んでいく。
本日の登山は、山頂のお蕎麦屋さんで、お蕎麦を食べるのも楽しみにしていた。なので、展望がなかった事は許す事にする。温かい物を頂き、体も温まり、改めて周囲を見ると、レインスーツを来ている人がいる。どうやら、私達がこれから下山するコースは、雨が降ってたようだ。今は止んでいるとの事。
「良かったね、K子。雨に降られなくて」
「反対側の静岡県方から登って正解だったね」
山頂には、鬼の絵の脇に「鬼に金棒」の金棒を持って写真を取れる場所があったので、記念に写真を撮り下山した。
予定通りに下山出来、お蕎麦と、思いがけず温かいコーヒーを山頂で飲めて満足、後一瞬の富士山。
登る以外だけではない楽しみも見つかった。
12月30日。2回目のポピュラーなコースで三頭山以来、山頂から富士山をはっきりと見れていないので、何とか大きい富士山を見ようとK子の希望も有り、東京都八王子市と神奈川県相模原市緑区との県境にある標高854.8メートルの山「陣馬山」へ行く事に。
山頂は360度の展望があり、運良くければ富士山が大きく見れるはずだ。
「陣馬高原下」10:30頃スタート。途中から道が所々凍っていて、銀世界が広がった。
「綺麗!K子、雪景色。テンンション上がったきた!」
「本当に綺麗」
暫し、山の中での雪景色を見るのが初めてな2人は、「感動」ひたすら「感動」していた。
登って来なくては見れない景色に見惚れた。
山頂に着くと360度大パノラマ。陣馬山シンボルの「白馬」をバックに写真を撮り合う。取り合いながら視界はあるものに釘付け。
「ほら、富士山、はっきり見えてる。でかい、迫力あるね」
「凄い、凄い。本当大きく見える」
富士山見たくて、この山を選び、雪景色を楽しんだ後にこの富士山。
「何と、素晴らしい日だ」
ちょうどお昼だったので、一軒開いていた茶店で「陣馬そば」を注文する。外のテーブルで、大迫力の富士山を前に、お蕎麦を食べた。何とも贅沢なランチだ。2人、何度見ても飽きることのない富士山を見ながら会話が弾む。
「ここを選んで、連れて来てくれて有難う」
K子からお礼を言われた。
「一緒に来れて、見れて良かった」と思った。
一緒にこの場で、同じ景色を見る事が出来て本当に良かった。
年の終わりの山行は、素晴らしい山行となった。
山はもうこりごりと思いから始まった山行。
山に魅せられ、1年の終わりを山で終わるとは思ってもいなかった。
互いに山に惹かれ、すっかり山女になってきた。
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