初、急登の岩場
2回目のリベンジ三頭山登頂を果たし、山に興味が出てきた。晴れた気持ちの良い日の山歩きは最高だった。山行後のちょっとした筋肉痛から、翌日の歩くのがぎこちない程のかなりな筋肉痛を心地良いと感じてしまう。「筋肉痛が嬉しい」と、いうのは変かも知れないが、筋肉痛を楽しんでいる自分がいる。
K子と登山後会社で会うとまず挨拶代わりに「筋肉痛どう?」と、声を掛け合う。まぁ、互いの歩く姿をみれば聞くまでもないのだが。
山の山行記録をネットにアップするのを始めたら、同サイトのユーザーさんの記録が気になり拝見するようになった。本当に知らない山の名前ばかりで、限りなく山はある。
奥多摩には沢山の山があるのが分かり、私の住んでいる千葉から日帰りで行ける山が沢山ある事を知った。奥多摩の山に絞り記録を拝見する。
まず見るのは、私と同じ日に登られた方の「三頭山」の記録だ。私と同じ景色の写真や、お花に絞った写真、シャッターを押したくなる景色は人様々で、皆さん其々の景色を見ながら山行されている。
感想も、同じ山を登ったからこそ分かる内容で共感出来たり、知らない情報を得たり、「思い出の山」「練習登山」「自分の好きな山」「季節毎に訪れる山」「仲間と訪れる山」「登ってみたかった山」等、山を選んだ理由も皆さん其々、色んな思いを感じながら、同じ山だけど個々の山になっている。
今度行きたい山のリサーチに入る。
「200名山、大岳山」が目に入る。人気の山みたいだ。標高1,267メートル。私が初めてハイキングに訪れた奥多摩にある「御岳山」経由で、「大岳山」まで行くコースが最もポピュラーのようだ。1度行った事のある御岳山経由なのでアクセスは分かっているし、親近感を覚え、この山に決めた。登りと下りは同じコースで、コースタイム5時間弱。
このコースタイムは、今の私達には長いのか短いのかが微妙なので、ロックガーデンは行かず(少しでも体力のいりそうな場所は省き)奥の院方面へ向かい、大岳山を目指す事にした。
2013年8月いざ大岳山へ。御岳山までは順調にきた。まだまだ体力も余裕。さていよいよここから先は未知の世界になる。暫くすると、「ブンブン」と音が聞こえる。私の周りを音をたてながら飛び回る。私を目指しているかのようにかなり顔に接近して、耳元まできて「ブンブン」
蜂が上半身から顔の周りを必要につきまとう。私は徹底して無視し歩き続ける。止まったら、刺されそうで止まれなかった。なのでペース配分が上手く出来ず、ペースが乱され、休憩するにも出来ずバテ気味だった。もう汗だくで、途中歩きながらゼリー飲料で何とか持ちこたえる。
「8月の低山は、蜂とか 虫が多いのか。虫対策が必要だったな」
虫に悩まされ、思うように休憩出来ず、K子もかなり疲れた表情になっていた。
「山頂は、まだかな?」互いに言い合う。
相変わらず、山の地図持っているのに見ず、案内標識で山行しているので、自分達がどこにいるか分かっていない。出発して約2時間半経過。
だいぶ開けた場所に出たので「やっと、着いた」と、胸を撫で下ろし、トイレがあったので先ずはトイレに行った。K子はトイレ行かなくても大丈夫との事なので待ってて貰い、階段を降りた先にトイレがあったので済ませ戻るとK子が言う。
「ねぇ、ここは頂上ではないみたい」
「えっ、違うの?」
そう、良く良く周囲を見てみたら、ここ大岳山荘跡だった。山頂は、奥の鳥居の先になると休憩していた方に教えてもらった。今迄の道とは違って、かなり開けた明るい場所に出たので頂上と勝手に勘違いしてしまった。開けた場所、イコール頂上。まだ登山経験(ハイキングも含む)数回のひよっ子登山者の私達は何とも単純で、「頂上であってくれと」という強い思いもあり勘違いした。
「あぁ~がっかり~」着いたと思った事で、一気に力が抜けていた。
「K子、少し休憩して行こう」
「そうだね。私もそうしたい」
暑くて汗だくで、休憩もしていなかったのでかなり体力を消耗していた。ここはあまり虫がいなかったので助かった。少し休憩し、気合を入れ直して本当の頂上を目指し再スタート。鳥居をくぐり暫くすると、かなり大きな露岩の急登が目の前に立ちはだかる。
「K子。これ、登れる?」
「こんなに足開く?」
互いに顔を見合わせる。登れるのか不安がよぎる大きな岩。だが登るしかない。降りて来る方とすれ違った。
「もう少しですから、頑張って下さい」とエールを送られた。両手を使い、しっかり足場を確保しながら、手、足の置く位置を決めながら登る。正に岩登りだ。上を見上げる。「どこまで続くんだ?この急登は!」「早く、頂上について!お願い!」私は心の中で叫ぶ。
先に登っていた私は、後ろを振り返りK子を見ると悪戦苦闘している。
「ゆっくり登ってきてね」
「分かった」
急登の岩場に、ほぼ無言状態。私もK子もこんな急登岩登りは始めてだった。
「K子、見えた。もうすぐ山頂だよ」最後の力を振り絞って、後ろを振り返ると、大分疲れた笑みを私に返した。
「本当っ!」声に力がない。
頂上に着いた瞬間、足がもつれそうになった。足がガクガクだった。座ってしまったら暫く立てそうになかったので、大岳山山頂碑で写真を撮り、思ったより狭い山頂から景色を見渡す。
「あぁ、もう駄目、限界、座りたい」
K子がザックから敷物を取り出し、平そうな地面に広げ始めた。
「さすがK子」用意が良い。私も敷くのを手伝い、敷き終わると直ぐに靴を脱いでシートに横たわる。
「あぁ~気持ち良い」山頂と勘違いし、気力を振り絞り、まさか最後の頂上付近で急登の岩場登りが待っているとは知らず、気力を何度振り絞ってきた事か。横になっていると心地良い風が身体を通過していく。靴を脱いだ時の足の開放感がたまらなかった。そこにタイミング良く冷たいものが私の頬に当たる。その瞬間に何か分かった。
「有難う」
K子が家で凍らせていたゼリー飲料だ。キャップを空けて飲む。所々まだ凍っていて、とても冷たく美味しかった。K子が持ってきた携帯食と、私の携帯食を半分づつに分けて、色んな種類の携帯食の味を楽しみ、エネルギー補給。生き返った。熱く火照った身体も段々と熱がとれてきた。山頂に着いたのが午後1時過ぎだったので、30分位山頂で休憩し、来た時と同じコースで下山する。
「まずあの急登の岩場下りが待っている。降りられるのか?」
上から見て見ると結構な傾斜だ。足の置き場を考えながら、大股になりすぎないようにコースを探す。以外と降り出したら登りよりも降りる方が楽で、呆気なく岩場をクリアー出来た。
私は登ったは良いが、帰りに降りると思うと憂鬱だったので、
「本当、良かった~」と思った。
無事にケーブルカー乗り場の「御嶽山駅」に午後四時過ぎには下山出来た。9時半にスタートしたので、ここまで6時間半かかったが、まだケーブルカーの時間はあったので、茶店でお蕎麦をたべた。登山中に茶店で食事をするの初めてだったので、登山直後のお蕎麦は格別に美味しかった。お蕎麦の後は甘いものを欲していたのでソフトクリームを食べた。ソフトクリームと大きく書かれた外のメニュー案内板が目に入っていたので、店内に入った時から頭の中ではお蕎麦食べて、ソフトクリームという流れが既に出来ていた。ソフトクリームは店内から出て外のベンチに座り、空気にあたりながら食べた。もう十分外の空気にあたってきたはずなのだが、そういう気分だった。食べ物をとても美味しく感じ、頂く。これって本当に幸せ。
今回は、気付けば初の縦走だった。やはりコースタイムはかなりかかってしまったが、夏の低山色々勉強になった。
一つ山を登る毎に、勉強になる事も積み重なっていく。
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