第12話 嗚呼、異世界我道を行く

 というわけで80000ですよ皆さん? やっぱり隠し持ってるんですねえ。


「す、すごいや師匠!」


「これが交渉術ってやつだ」


 生憎元から勉強もあたまもそこまでヘボじゃないもんね。

 そういうのがダイレクトで出せるこの世界は中々捨てたもんじゃない。あとはあの女たちがいなければなあ……。

 そんなふうに考えてた俺の足元に、石が飛んできた。1つ2つ3つ、元をたどると四、五人のガキがいた。


「村から出ていけ『異界人』!」


「こそ泥!」


「知り合いか?」


「う、うん」


 おーおー、威勢がいいい。

 俺は投石を無視して、リーダーっぽいガキの前に立つ。少しビビってるみたいだが、どこか余裕がある。自分がガキだっていう安心感だな、クソといいいとことん腐った連中だぜ。


「や、やんのかよ。おれは―うわ! くさっ⁉」


「ふん!」


「ぶっ!」


 何か喚いてるクソガキを引っぱたき、唖然とする他のガキと影で見てるだろうクソ村人どもに聞こえるように叫ぶ。


「今から俺はこのガキとその親をぶちのめす! 言っとくが俺は強いぞ! 土砂崩れのことを聞いてたら脅しじゃないってわかるはずだ! こんな村ひとひねりだ!

立ち向かってくるならそいつらからぶっ飛ばす! どうするその他のガキども⁉」


 ガキどもは怯えて顔を見合わせ、散り散りに散っていった。クソ村人も、一人も出てこない。

 俺はひっぱたかれて倒れ、震えて泣いているガキにそっと囁いた。


「いい村だな?」


 ガキが大きく震えて一瞬止まり、より大きな声で泣き出した。良い薬になるだろう、断じて臭いって言われたからやったんじゃないぞ。

 悪しき差別は子供のうちに絶たねばならない。


「いくぞ」


「う、うん」


 見ろ、アインのあの顔、泣いてるガキを心配そうに見てやがる。こんなやつは絶対盗みなんかしねえよ、言いがかりに決まってる。

 やりすぎだって? じゃあどうするんだ? 言い聞かせるのか? 俺はそんな回りくどいことは嫌だ。あんな連中にそんなことしてやるもんか。

 折角この鎧があるんだ、やりたいようにやらせてもらうぜ。向こうじゃできなかった、正義っていうのを貫いちゃうんだから。ぐふふ。

 ……そういえばなんで俺向こうにあんまり帰りたいと思わないんだろう? ホームシックくらいになってもいいはずなのに……。

 ま、いいさっさと山賊とかいうのを見つけて戻ろうっと。その前に―


「ねえ、俺ってそんな臭い?」


「え? そ、そんなことないよ」


 ……臭うんだな。ちくしょー、なんとかならねえもんかなあ。

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