第7話 嗚呼、異世界徒歩2時間

 鎧を着たままだと困ることに追加が一つ。歩くとあちこち軋んで大変うるさい。とはいえ、この世界観だと俺の姿は別段珍しくないのが救いだな。あ~背中が痒い!

 俺は右手の棒きれで背中を掻きながら、左手でギルドで紹介された依頼書を確認する。依頼は以下の通り、

 『体力自慢募集 土砂崩れの撤去作業補助 報奨金30000 アベレ村』。

 幸いなことに、城から徒歩2時間。30000は中々高報酬だし、力仕事はトレーニングにもなるしいいこと尽くし。てなわけで、すたこら向かってる途中だ。

 手ぶらに見える? 腰に下げたポーチにご注目。冒険者の必需品『果て無い小袋(ブラックポケット)』だ。要するに4次元ポケットで、薬草とか毒けし草とか色々ここにいれてるんだ。性能が良いのになると、国ぐらい楽々入るのとか、冷蔵機能とか入って宿に出来るのもあるらしい。

 あの3悪女は腹立たしいことに、いくつもあるそれを俺にくれない。自腹じゃこれが精いっぱいなのだ。


「キイイイイイイ!」


「お」


 追剥コンドル2匹、傷だらけでご丁寧に眼帯までした鳥の魔物だ。爪と嘴が武器で持ってるものを盗む嫌なやつだ。


「キイイ!」


「よっと」


 これくらいなら軽い軽い。眼を瞑ってたって避けられるぜ。しかし、こういうのを体験すると、自分がすごいと錯覚するよなあ。だってカラスの倍はある鳥相手に余裕なんだよ? すごいじゃん? なのに世界は広いし、織姫たちと来たら―


「あっ―」


「キイッ!」


「クアー!」


「し、しまった!」


 俺の全財産! ……! ここが俺の抜けてるところかな! 馬鹿笑いして飛び立つクソ鳥2匹を追いかけて、俺は森に入っていく。

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