第6話 嗚呼、異世界消臭必須

「おっす」

「おうだいき……なんの匂いだ?」

「消臭ハーブっす」


 鎧の弊害は結構たくさんあった。

 かゆいところを掻けない、指が太すぎて隙間に入れねえんだ。仕方ないから木の棒の先にごわごわの布の切れ端をつけたのをつっこんで掻いてたけど、血は出るし折れたら取るのに逆立ちをしなけりゃいかん。今も欠片が足底に転がっていて実に気持ち悪いぜ。

 風呂も大変だ、完全に密封されてるから、頭から潜って首からお湯を入れないと浸かれねえ。潜って上がってを繰り返して、石鹸の欠片を入れて激しく動いて中でシェイク。逆立ちして排水して、さっぱり流すのにもう何回もお湯に浸からなければならない。そういう重労働だよ。

 それと熱い、蒸して汗臭くってかゆくて死にそうだ。かゆみ止めと皮膚炎の薬は欠かせねえ。

 匂いもやばかった。パンツをはき過ぎたような、汗疹みたいな、とにかく嫌なにおいが3日目くらいから漂い始めた。織姫に怒られて、消臭ハーブも常備しないといけない。それもかなり付けないと匂い負けしちまう。頼んで買ってきてもらうしかねえ。

 だもんで外出禁止が解けたと同時に、せっせと貯めた金が底を尽いた。だって誰も恵んでも貸してもくれないんだもん。貧困がなくならないのはこういう根性の腐った連中がはびこってるからだ。

 早く稼がないとにっちもさっちも行かない。ギルドに直行したのは言うまでもないだろう。途中顔を顰める奴らが多かったのはきっと気のせいだ。


「金金金金! 金になる依頼!」

「わ、わかったわかった近寄るな、くさい。……けどお前に出来そうなのは……」

「一番高いの! 今の俺すげー強いから!」


 トレーニングは続けてたんだぞ、強いぞ。


「いや、でも……」

「いいから!」

「な、なんだよその勢いは……じゃあ、これかな?」


 俺は受付から渡された依頼書を手に取った。

 『がれきの撤去作業』? なんだか……あ、でも金はいいな。てかかなりいい。


「初めての依頼だから金の具合がわからないんだろう。何も言わなきゃその分払うさ。それと、リオからご指名だぞ。教会の屋根の修理」

「じゃ、これ終わったらすぐ行くっすよ」


 依頼書を手に走り出す。

 とにもかくにもまとまった額の金がいるんだ。それとこれを脱ぐ方法!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る