第5話 嗚呼、異世界宝の持ち腐れ

 何をしてるかって? 

 洗濯だよ! 洗濯! 100はいる城の連中のな! ちくしょーなんで洗濯機はねえんだ⁉ 『マキュラール』ってのは本当に融通利かねーな! 便利なもんはあっちでもこっちでもあった方がいいじゃねえか。


「だいきちさんそれあつくないの?」

「うるっせい!」


× × ×


 最初の反乱が鎮圧され、俺はとてもここには書けない拷問の中で10回くらいおばあちゃんに再会した。最後らへんは呆れお説教されちゃったよ。それより、この城には拷問ルームが完備されていると初めて知ったぜ。恐ろしい、すげえ恐ろしい。


「おら! これで全部か!」

「はひいいい……もうなぐらないでくらさいいいい……はがもう2ほんひかないんれすう」


 吊るされてサンドバッグにされて100発ほど殴られて出てセリフだがこれは嘘だ。たとえどんな目にあっても俺は心を折られはしない。……本当だぞ。ていうか肉体強化魔法とか使うなよな、今までで受けた中で最強のパンチだぞ俺の長所が霞んじゃうじゃないか。


「会長、これじゃないですか?」

「どれ! ……『哀しみなき世界(パーフェクト・ワールド)』?」

「呪いの、装備」

「なんれしゅか……しょれはあ……?」

「あんたは黙ってなさい!」

「は、はひい、しゅいましぇんでしちゃあ……」


 無論これも嘘だ、俺はそれをちゃんと聞いてた、偉いだろ?

 それによると、この鎧は魔法は勿論、打撃攻撃も殆ど無効化するすごい装備品らしい。怪力に加え、ある程度自分の意志で変形させることもできるが、代償として一度着たら脱げなくなるのが欠点だ。

 あの3人は色々試したが外せなかった、となるともっと上の腕奴を探すしかない。

 そして、『哀しみなき世界』……なんだこの名前は、ええい、鎧でいい鎧で! 兜が揃って初めて完成するものらしい。教会の骸骨の時点でそれがないってことは、元々なかったのか、誰かが持って行ったのか。だから頭への攻撃は有効、兜を見つけるまでは注意しないとな。兜さえありゃあ無敵だ魔法は怖くねえ。


「ゆるじでぐだざいいいいい! でぎごごろなんでずうううう! いだいよおおおお!」


 崇高な使命を胸に秘め、織姫たちを欺くため仮初の土下座で許してもらった俺は、1か月間の外出禁止と2日に1度に倍増した魔法の実験台兼囮を条件に、ひどいことになっていた顔の治療を引き出した。……本当だよ? 交渉術だよ?

 さて、外出できなくてもトレーニングはできるもんね。鎧のおかげで常に重しを付けられてるみたいなもんだから鍛えられるし、パワーは前とケタ違い。魔物と戦っても、魔法に巻き込まれても、頭に当たらなけりゃどうってことない。鎧を変形させる練習も毎日してるぞ。一度失敗したからってなんだ! 諦めず立ち上がる限り負けじゃない! エイドリア~ン! 


× × ×


「あ~んおこったあ」

「おにいちゃんヤヤがおもらししたあ、いけないんだあ」

「あ、ご、ごめん」


 てなわけでこれは、織姫を油断させる作戦だ。制裁が怖いんじゃないぞ。

 環境にやさしい布おむつに取り替え、濡れたのを洗いながら俺はクールに計画を練る。外出禁止が解けたら、金を稼いでスキルを憶えて兜を探してやつらを跪かせる! 戦闘力は冗談でなく数倍だ、小遣い稼ぎに甘んじず、スキルを手に入れるために金をゲットだ。


「ルーがうんちしたいって」

「一人で行きなさいそれくらい」

「おなかすいた」

「まだお昼じゃないだろ? 我慢する」

「大吉さん、買ってくるものってこれでよかったですか?」

「そこに置いておけ、終わったら見るから」


 そう、これは偽りの姿!

 牙を研ぎ、隙を伺い……やつらを跪かせるのだ! 

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