オッドのお願い2
衣料店らしき店を見つけて、翔とオッドは入るが、ここでさらなる盲点があった。ファッション感覚が現代な翔とオッドからしてみると、どの衣料店の服もダサかった。
猫が本当にエリザベスカラーを付けるという冗談以外に面白い要素は無かった。
「お客様本当にこれでよろしいのでしょうか?」
「これでお願いします」
こちらの世界でも男性用の服として存在していたセーラー服にプリーツスカート。ようするに女子高生のスタイルである。
オッドも翔も納得出来る服装がこれしか存在しなかった。他はやぼったすぎると翔もオッドも感じてしまった。
「お、おにあいですね」
店員が若干引きつっているがそんなの無視である。
「服はこれを着ていくから、メイド服の方を包んどいてくれ、あとこれもう一セットよろしく」
街中で若干奇異の目でオッドが見られているが、オッドも翔も無視することにした。
オッドも翔もこの時は全く理解していなかったが、その後この子女にセーラー服スタイルをこの世界に確立させた瞬間であり、数年後大流行するが、この時のオッドと翔に知るよしなど無かった。
その他にもブーツや下着(オッドの下着はオッドに選ばせた)など生活必要品を次々と購入していく。翔も自分の服を調達する。地球から違和感のあるスタイルを選びたく無い為にワイシャツの追加購入と学校指定のズボンによく似ている物を複数調達した。
二人で来るのは失敗だった。翔はそう思ったが、オッド自身は楽しそう女子高生ファッションをしているので、気苦労もすぐに吹っ飛んだ。
二人で露店の芋を食す(冒険者は冒険しちゃダメ)と、日も傾き初めて来た。
「何か買いそびれた物ってあるか?」
「なんでもいいですか?」
「まぁ常識の範囲なら」
「ならオッドは首輪がほしいです」
翔の脳内でルナに罵倒されるイメージがなぜか思い浮かばれた。
「首輪ならネコの時でもつけていられます」
「そういうことか、じゃあ宝石店かな? チョーカーで良いな?」
さきほどの散策で見つけた宝石店に入ると迷わず翔はチョーカーを選んだ。アクセントに銀のネコが装飾されている物だ。銀にはオパール色に輝く線が何本か装飾されている。地球には無かった不思議な加工である。
値段もよく見ずに銀貨を何枚か払いチョーカーを購入する。
「ごしゅじんさまがつけてくれますか?」
「あぁ」
首に付ける物なので必然的に翔とオッドの顔が近づく。瞳をつぶるオッドがキスを期待しているように見えたが、翔は気の迷いだと頭から邪念を振り払った。
「ほら、これで俺のだな」
「はい、オッドはごしゅじんさまのです」
思ったよりも大荷物になったのをオッドに持たせながら城を目指す。翔は全て持つとオッドに言ったのだが、「ごしゅじんさまにそんなことさせません」と言われ何も持たせて貰えなかった。
結果としてそれが功を奏した。
「ひったくりよ!」
女性の悲鳴が聞こえた。翔の目の前を獣人の男が走って行く。
翔は一瞬で獣人の男に追いつくと獣人の男を地面に投げつけた。
「今すぐ取ったの返せばこれ以上の事はしない」
「こんなのいらねえよ」
男が投げ捨てたのはアミュレットだった。アミュレットには先ほどのチョーカーと同じ装飾によって幾何学的な模様が描かれていた。
遅れて女性とオッドが走ってきた。
「さすがごしゅじんさまですね」
「まぁな。それで盗まれたのはこれであってますか?」
獣人の男から奪い返したを女性に手渡す。
オークの女性だった。翔の想像するオークは筋肉で出来た2メートルぐらいの化け物と言ったイメージだったが、その女性は違っていた。
肌が緑色で牙が見える女性と言ったぐらいだ。
翔の美的センスで言えば十二分に美しいと言えた
「ありがとうございます。本当に大事な物なんです」
「お前も食い扶持に困ってるんだろうけど、だからって犯罪に手を染めるなよ!」
翔は獣人の男を開放する。投げつけたときにわざと腕にひねりを付けたので当面の合間は腕を使うのに支障が出るだろう。少なくとも引ったくりは難しい。日常生活の事までは翔が面倒を見ることでも無いだろう。
「てめえに俺の苦労が解ってたまるかよ!」
そう吐き捨てると獣人の男は走って逃げていった。
「ありがとうございます」
翔はようやくその女性を見た。赤こけた長い髪を三つ編みでまとめており、メガネを掛けていた。目は細く、牙も少ししか見えなかった。体格も身長もほぼオッドと同じで、オークのイメージからかけ離れたか弱い女性だった。
「いえ、気にしないでください」
「すみません急ぎの用事があるので失礼します」
オークの女性は走って行った。
時間に間に合わせる為に走るしか無かった。元から集会に遅れそうだったのに先ほどの引ったくりのおかげで遅刻はほぼ確定になってしまった。
ほんとに不幸な日であると彼女は感じていた。
集会には遅れそうになるし、兵士との接触も極力避けるように言われていた。特にアミュレットに関しては最悪の一言であった。
人に見せては成らないと厳命されていた上に、兵士にまで見られる始末である。
処罰を受けてもしょうがないぐらいの失態であった。
息をきらせながら彼女は迷うこと無く地下の下水道を歩いて行く。アストラルの首都は下水が完全に配備されていた。計画的に制作された都市であるためにそう言った設備は他の五つの国に比べても頭一つ抜けていた。
ならばこの空間も王が意図して作ったのだろうと、彼女は考えていた。
下水道を抜けるとぽっかりと開いた空間があった。
一番近いのは教会であろう。椅子が陳列され一番前には教壇が置いてある。しかしそれだけである。シンボルのような物は存在しない。
彼女は入るとすぐにアミュレットを入り口にたっている男に見せた。
「追放されし者よ、時間ギリギリだな」
教壇に立つ男はゆっくりと、だが、力強く語り始める。
「エデンレジデンツの教義を行う。魔王様によるマナのご加護をエーリュマ」
「エーリュマ」
エデンレジデンツの信者達は祈りの言葉を教主に続き唱えた。
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