ロベリアの研究室
国立アストラル学院は城と同じか、それよりも広大であり、また美しい装飾が施されていた。
「凄い大きいね」
「これ以外にも13個ほどカレッジがあるわよ。ロベリアがいるのは魔法学部ね」
学院内部に入り入り口でロベリアに会いに来た事を告げると、ネズミの使い魔が道案内をしてくれた。
ロベリアの研究室は大学の4階のもっとも奥にあった。
扉にはロベリア ブラッドと名前しか書いておらず研究内容などはわからなかった。
翔が扉をノックする。
「誰もいないから帰れ」
ロベリアの声だった。
「俺だよ。翔だよ。ロベリアがマンティコアの毒の解毒剤のレポートを頼むって言ってきたんだろ。今日はそのレポートを言いに着た。あとお礼がしたい」
「そう言えばそんな事も言ったな。鍵は開いてるから勝手に入ってくれ」
「じゃあ失礼するぞ」
ドアを開いてまず目に付いたのは裸体の少女だった。
膨らみかけの胸とあばら、ほとんど凹凸の無いスマートな体型をしている。隠す気は無いと言わんばかりに大股開きでロベリアは椅子に座りにんまりとした笑顔で翔を見ていた。
翔はそんなロベリアを素直に奇麗だなと思った。
「ってなんで全裸なんだよ!」
「ここは私の部屋だ。自分の部屋で全裸でいて何が悪い」
「俺が入るだろ! 少しは気にしろ!」
「気にする? 君はこんな貧相な身体に欲情するのかい? だったらルナとの婚約をさっさと止めて孤児院で幼女でも拾ってくることをオススメするよ」
「常識的な話をしてるんだよ!」
「研究者とは常に常識を疑う人間だよ。常識などつまらない事にこだわっているから、凡人は凡人から抜け出せないのだよ。もっと疑う事を覚えたまえ。
こんな所でつまらないいざこざするつもりは無いさっさと僕にマンティコアにやられた傷跡を見せたまえ」
「翔ちょっとどきなさい」
ルナがロベリアの研究室に入るとドアを勢いよく閉めた。
おおよそ5分後しぶしぶ白衣を着てやったと言わんばかりのロベリアが扉を開けた。
「こんな奴を嫁にするのは止めておけ。あいつ鬼だぞ」
「誰が鬼よ。大体服が白衣しか無いってどういうことよ!?」
「白衣だけあれば十分だろ」
「十分じゃ無いわよ。貴方ぐらいの年齢ならオシャレに少しぐらい興味あるでしょ」
「そんな凡人共に構っている暇は無いんでね。服は着たんだ。早く傷口を見せたまえ」
翔はロベリアの研究室に入った。部屋は散らかっており、足の踏み場こそあるが、机の上には良くわからない物体や本が山積みになっていた。
翔はマンティコアにさされた傷口をロベリアに見せた。
「すでに炎症が引いてるね。やはり僕の思った通りだったね。第二次魔王大戦の時の文献を参考にして作った薬にさらに僕が効果があると思った薬を入れたが、ちゃんと働いてたみたいだ」
「おかげで助かったよ。きっと薬を飲まなかったらカーディフに負けていたね」
「君の決闘の結果などどうでも良い。
まぁフルーツはありがたく頂くがね。凡人の出来る事など天才の足を引っ張らずに素直に言う事を聞くだけ。それが解らない奴が多すぎて困るよ」
そう言うとロベリアは机の上を漁ると水晶玉を取り出した。水晶玉からはアストラル王国が描かれた立体映像が出てきた。
「この立体映像には今まで出現したゲートとそのゲートによって破壊されたマナ管理用の塔が明示されている。
本来は町と城への結界用途なのだが、現状の破損状態だとうまく機能しない。
ドラゴンロアーで使用してるテレポート機能はまだ大丈夫だが、これ以上破壊されるとそれも危うい」
「なぁマナって結局何なんだ?」
翔のRPGで得た認識としてはマナ=魔力であったが、話を聞いていくとどうやら別の概念であると言う事が何となくではあるが解ってきた。
「モーセの奴なぜそう言う基本的な事を学ばせない? 特別に私がこの国の成り立ちから講義してやろう」
ロベリアは水晶を撫でると投影される映像が変わった。とある大陸らしいが、見たことの無い形をしている。
「ここは五つの国大陸と呼ばれている。
第二次魔王大戦の時に五つの国、人間、オーク、エルフ、ドワーフ、獣人、の五種族が手を組んで一つの連合を作り、魔王軍と戦った。
魔王を打ち倒した後はその連合の象徴として五つの種族が共存する人工的な首都を作りあげた。それがここアストラルだ。
国の名前も第二次魔王大戦の英雄の名前を取ってアストラル連合王国と名前を変えた。大陸の名前だけが過去の象徴だな。
ここに国を作ったのもこの場所がマナの流れが良いからだろう。マナが豊富であると言うことは豊作に繋がり、山では魔石が見つかる、つまり国が栄えやすいんだ。
今まで誰もここに国を作らなかったのが不思議なぐらいだ。
マナと言うのは魔力の源だな。ただ物事には限度がある。物が抱える許容量を超えたマナを持つと種族なら魔人、モンスターなら魔獣、そしてそれらを意図的に生み出す存在が魔王だ。
魔王の発生がどのようにして起こっているのかは解っていない。僕の研究対象の一つだよ」
「第二次って事は第一次もあったんだよな?」
「文献が残っていない。たまに遺跡から現代の技術では作れない物が出土される。例えばエーテルフレームなどがそうだ。そういうのをレガシーと呼んでいる」
「そうだったのか、ありがとう。ロベリアってやっぱり良い奴なんだな」
興味が無いとでも言いたげにロベリアは視線をそらした。
「僕を良い奴だと、なら君はそうとうの変わり者だね。僕をそう評価する奴など今までだれもいなかったさ」
「研究の為だろうと俺に薬をくれただろ。今回だって歴史の事を教えてくれた」
「あまりにも愚かすぎて見ていられなかっただけさ。要事はすんだだろ? 僕は研究に忙しいんだ」
「そうだ。これ預かってくれないか」
翔はスマホを取り出した。カーディフとの決闘の時にエーテルフレームのフェイクとして取り出したは良いが、破損してしまって使えなくなっていたものだ。
「あぁ決闘の時のエーテルフレームのフェイクか」
「決闘見てたの?」
「まぁね使い魔経由で薬の効能がどの程度か監視していたよ。よく見えなかったが、エーテルフレームとはまた違った物だな。レガシーかいこれは?」
「いや俺の世界ではスマートフォンと呼ばれる情報をやりとりする電気で動く機械なんだ」
「ほう、マナの無い異世界だと電気による学問が発達するのか、興味深いな。直せるかどうかは別として預からせて貰うよ。
せっかくだ、異世界の存在が知られているのになぜ異世界にいかないか疑問に思わないかい?」
翔は少しの合間考えて見るが答えが思いつかなかった。少なくとも地球なら次元を越えた侵略戦争をしそうだ。
「マナがほとんど無いからだよ。異世界に行くのに膨大なマナが掛かるくせに他の世界にはほっとんどマナが無い。
君がこの世界に呼ばれたのはこの世界ですらまず居ないレベルでマナが多いのと、預言書が君の事を救世主と呼んだからだ。
そうでなければ異世界に行きたがるのなど、酔狂な異世界学の学者ぐらいだろうな。
物理法則が違って即死する危険性もあると言うのによく行こうと考える物だよ」
「ありがとう。勉強になったよ」
「そうかい。僕も暇つぶしになったよ。さて、そろそろ研究を再開したいから出て行ってくれ」
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