第21話 休んだ理由
店で薬ともう一つあるものを買い男子寮のカクランのいる階に行く。そこはほかかの階とは違いロビーが無くシンプルな黒と白のちょっと高そうなマンションの様になっていた。
「どこだっけ?」
「一〇二ここだろ?早くしろよ」
レゲインが答えてくれた。
ピンポーン。
美来がチャイムを押すが出てこない。
「居ないのかな?」
「いるだろ」
それを見てレゲインはチャイムを何度も連打しだした。
「レゲイン、いくらなんでも迷惑」
ガチャッ……。
するとドアが開き鬱陶しそうにカクランが出てきた。
「うっ何だよ……うるせぇな」
シャツとズボンだけでカチューシャも外されていた。寝癖のついた頭を抑えながらこちらを見る顔色が悪い気がする。
「!……お前ら、何でここに?」
「アウラー先生に頼まれて薬を」
申し訳なさそうに美来がカクランに事情を話して薬を渡す。
「そう、ありがとね」
力の無い笑顔でそう言い部屋の中に上げてくれた。
部屋は特に散らかっていなくて机の周りにワインの瓶が何本か立てある。机の上には飲みかけのワイングラスが置いてあった。
カクランは飲み物を出してくれる。レゲインはフードを脱いで片膝を立てて座った。
「俺、紅茶苦手なんだけど」
「文句言うなよ……」
カクランは水道の方に行く。
「酔ってるから薬だったんだな」
「動物なのに飲酒して大丈夫なの?」
レゲインは顔をしかめて紅茶を一口飲んだ。
「俺らはただの動物じゃねぇし。人間と動物を掛け合わせたみてぇなものだから大丈夫に決まってんだろ」
そう言って周りを見て瓶を一本とる。
「けど、飲みすぎだろあいつ」
「レゲインは飲まないの?」
「馬鹿か、二十年たたねぇと飲んじゃいけねぇんだ。俺、まだ一三年しか生きてねぇぞ」
「一三歳なの?」
「一六歳。年数分齢をとるるわけじゃないんだ」
カクランにも教えてもらったのかも忘れてる。美来は少し間をあけて話す。
「じゃあ、私より歳上なんだ。レゲインもバムみたいに動物の姿になれるの?」
「なれるけど、なんで?」
「森で、落ちたときコウモリになれば」
「無理だ、人によっては大きい奴もいるけど、俺は普通の大きさのコウモリだから二人も支えられるか」
「小さいんだ」
話しているとカクランが戻ってきてベットに腰掛ける。
「ありがとね、わざわざ来てくれて」
微笑んでいたがまだ気分が悪そうだ。
「うん、何かあったの?」
美来がそう聞くと俯いて、やっぱり何かあったのか顔つきがけわしくなった。
「そうだカクラン、はい!」
美来は薬と一緒に買っていたものを渡す。それを見てさすがにレゲインも笑いをこらえて目をそらしていた。カクランは受け取っりそれを見てショックを受けている。
「えっ! 揚げって何だよ! オレはお稲荷様か!?」
かなり勢いのあるツッコミだ。
「狐って揚げが好きなんだよね?」
「知らねぇよ、僕はいろんなもの食べてるから。それより、この量……味噌汁にでも入れるか」
とりあえず、カクランは油揚げを貰うつもりだ。その後、美来とレゲインを玄関で見送る。
「女の子だけでよかったのにな」
そう言ってレゲインを見た。
「引きずられてきたんだよ」
「話に乗ったんでしょ?」
「あーそうだったかもな」
美来とレゲインのやり取りを微笑ましそうに見ていた。
「二人とも来てくれてありがと。また明日な」
最後は素直にお礼を言って見送ってくれた。
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