第19話 怒った理由

「バムは、起こしに行ったんだけど具合が悪いって」

「そっか……」

カクランは心配そうにしている美来を見て黙ってしまう。

「そんな心配することか? どうなろうと俺らには警戒心を持つための犠牲でしかねぇのに」

「レゲイン……」

カクランが何かを言おうとすると銀髪のスーツを着た男が走ってきてカクランをアタッシュケースで殴り飛ばす。

「うげっ!? ……い、ケホッケホッ」

「なんで連絡つけねぇんだよ! おかげで、足止めくらっただろ! カク!」

男はカクランの胸ぐらを掴み揺さぶる。

「聞いてんのかよ」

「ううっ悪かったって、うっかり忘れちゃってさアハハッ」

「俺は、忙しいんだ。知ってんだろ」

カクランはずっと、笑いながら怒鳴られている。銀髪の男は肩らへんで髪を束ねて前にたらしている。

「仲よさそうだね、カクラン殴られてたけど大丈夫なのかな?」

「大丈夫だろ、見た感じから」

すると銀髪の男はカクランを離し美来達を見る。

「で、誰のための武器なんだ? 軽量を頼まれたからコウモリ君は違うな」

レゲインは慌ててフードを被りなおす。カクランは起き上がり美来の横に立ち美来の肩に手を置く。

「この子だよ、この白髪は、オレの友達のテンスラだガラ悪いけどな」

「白髪じゃねぇ銀髪だ! ほら、頼まれたもの作ってきたぞ」

テンスラはそう言ってかがんでケースを開ける。

「おー、流石仕事が早いなぁ」

カクランは武器を見て感心している。

「チェンジとベニール機能をつけたけど大丈夫なのか?」

テンスラは心配そうに美来を見る。

「大丈夫、これでも想像源は多いからね」

「えっと美来、このナイフを手に持つのをイメージしてみろ」

美来は首をかしげながらもテンスラに言われた通り手で持っているのをイメージした。するとケースの中のナイフが消え手元に現れた。

「わっ!? ワープした……」

今度は手元から消えテンスラの手元に行く。

「疲れてねぇか?」

「はい、大丈夫です」

「じゃ、後はこの石に血をかけるだけなんだけど……」

テンスラはそう言って美来を見る。

「血を? なんで?」

痛いのは嫌なんだけどな。

「このままじゃ誰の手にでも渡るから敵に渡ったら困るだろ?」

「手元に寄せる機能は想像石の効果で想像石は使ってる人の想像源を使うから疲れてないか聞いたんだ。想像石は血をつける事で主人を判断するんだ」

カクランがそう説明してくれた。するとレゲインが呆れた目で見てくる。

「こないだ言ってたのそのまま言ってるだけだけ。美来授業中寝てねぇか?」

「寝てないよ! 多分、寝てない」

テンスラは立ち上がり美来の前に立つ。

「ちょっとじっとしてろよ」

美来の髪をかき分け耳たぶに少し切れ目を入れそこから血を取ってケースの方に戻り石に血を付けた。

美来は耳を触る。

「痛くないだろ?」

「うん、痛くない」

「指に切れ目なんて入れたくないだろ? 痛いし」

テンスラは二丁の銃とナイフが収められたベルトを美来に渡した。

「銃は弾丸を変える事ができる。例えば、相手に鎖を撃ちこだり遠距離から電撃を浴びせられる。もちろん普通の銃弾も撃てるから。ナイフは刃先を剣にしたり色々とな」

美来は興味津々にナイフと銃を見る。

「メンテナンスとか必要になったらこの番号に電話しろよ?」

テンスラが電話番号を書いた紙を渡して行こうとするとカクランが呼び止めテンスラに頼む。

「テンスラー俺の槍のメンテナンスよろしく頼むよ」

「あ? お前、あれ以来使わねぇだろ?やるだけ無駄じゃねぇの?」

テンスラにそう言われカクランは一瞬表情が曇った。

「今回の武器代にメンテナンス代合わせて二五〇万だな」

そう言ってカクランから持ち手のようなものを受け取る。

「二五〇万っ!? カクラン私の武器って……」

美来はなんだか心配になりカクランに聞くとテンスラが言う。

「武器はカクラン持ち。それに美来のメンテナンスは無料だから心配はしなくていいよ、俺が生きてる限り呼ばれたらすぐ行くよ」

そう言ってその場から立ち去った。

「二五〇万か……あいつらオレをいじめてるよな」

カクランは消え入りそうな声でそう呟いていた。

「本当にいいの?」

「僕の貯金で何とかなるし」

いくら貯金しているのかな?

「美来それってどう使うんだよ? あの木、撃ってみろよ」

レゲインは興味津々だ。美来は銃を構えて恐る恐る撃ってみるがカチッという音が鳴るだけだ。

「あれ?」

「貸してみなよ」

カクランは美来から銃を受け取り構え引き金を引く。

――ドンッ

大きな音と共に銃口から煙が上がる。池の向こう側の木から鳥が驚いて飛び上がっていた。

「あ……どうやって撃ったの!?」

カクランは銃を美来に返して言う。

「撃った時の瞬間とかだけじゃなく弾丸の形もイメージするんだよ」

美来は言われた通りに撃ってみる。パンッ!と高い音が鳴り池の中央らへんに小さな水しぶきが上がった。

「撃てた」

「練習すれば自然に撃てるようになるよ、訓練所に射撃場もあるしね」

カクランは美来の頭を撫でる。

「わっ!?」

美来は驚いて身を引いた。

「あ、ごめん……つい癖で」

やっぱり女の子っぽい仕草で謝る。

人の頭撫でるのが癖ってどうなってるのこの人。

「いつも通り走って、終わったら、レゲインは僕と手合わせしようか」

「本気で?」

「僕は手加減するから。美来は武器の扱いに慣れようか」

ていなと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る