第2想 バムの異変

第18話 遅い理由

今日は休みだったが珍しくバムが起きて来ず美来は仕方なくレゲインと二人である場所へ向かった。

その場所ではやけにワクワクしているカクランが待っていた。

「何だあいつ、恋人でも来るのか?」

「居たとしたら今までの浮気になるんじゃ?」

「何言ってんだ? 彼女なんていないけど? 僕は今の今までフリーだよ」

近くに行く、さっきの話が聞こえていたのか自慢げにカクランはそう言った。

自慢できることなのかは疑問だったが。

「だから、美来ちゃんいつでも僕のところに来てもいいんだよ」

ニコニコしながら美来を誘う。

「え……いや、いいよ遠慮する」

「ドン引きしないで、美来。悲しくなる」

「今日はなにするんだよ?」

レゲインはフードを脱ぎながら聞いた。

「それ、教えてもらう態度かよ? もうすぐ美来の武器が届くんだよ」

「え、もうくるの!?」


数日前、魔女に襲われた後にレゲインはカクランを捜し出し半ば脅すように指導を申し込んだ。

「何で僕がレゲインまで鍛えないといけないの? 美来は、手取り足と……」

カクランは美来の目の高さに屈んだが言い終わる前にレゲインに顔を蹴り飛ばされた。

「美来を助けたのは誰だよ? しかもそれを陰で見てたのは誰だ?」

「いきなり蹴るとか酷くないか!?」

そう言っているわりに無傷のうえ痛そうではない。

「次、見かけてもお前は見殺しにすんだろ? 教えてくれてもいいんじゃ?」

レゲインは睨むようにそう言った。

「じゃあとりあえず二人とも体力と持久力つけるためこの池を二十周走れ」

「二十周も……私」

「美来は、想像者の世界から見た目は変わらないけど体力、持久力、筋力とかが二倍になるんだよ、これぐらい走らないと意味ないんだ」

「俺は!?」

「何言る? お前は動物的な体力だろ? 親が人間か魔女じゃない限り。お前は三十周な」

「マジかよ……」

レゲインは明らかにショックを受けている。

俺、倒れねぇかな……池の周り走るとか算数かよ。


走り終えた後話の流れでカクランが美来の武器などを決める事になった。

「美来の能力、僕が決めてもいいかな?」

「いいの? じゃあ決めてほしい」

美来が答えると誰かに連絡をとる。

「寝てた? んな、寝る時間じゃないだろ。武器を頼みたんだけど、そうだな、軽い銃とナイフで霊石と想像石を使ったやつよろしく」

親しい人と話していたらしいいつもと口調が違った気がする。

「おけ、じゃあ美来の技とかについては明後日ぐらいかな? 腹筋と腕立て伏せを、百回ずつな」

「えっ!? は、はい……」

と、いうことがあったらしい。ここに来るまでにレゲインに聞いた話だ。

美来はその時のことをほぼ忘れていた。あの日から毎日聞いていたらしくレゲインに軽く怒られた。

「にしても、遅いな。もう着いてもいいぐらいなのに。あ、係の奴に伝えるの忘れてた、今頃足止めされてるな」

「え? いいの?」

「大丈夫だろ、そういえば、いっつもバムと一緒に来てたのに今日はどうしたの?」



「はぁ! 俺は、頼まれてここにいるんだよ! なんで入れねぇんだ?」

銀髪の男が監視員に文句を言っていた。

「で、ですが校長からは来訪者の連絡は一切ありません、それに留守ですし」

「じゃあ、カクランを呼べよ」

「カクラン・アニールさんですか? 嫌ですよ、下手すると殺されるとか……」

「じゃあ、今、俺に殺されたいのか?」

「わ、分かりましたどうぞ」

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