第17話 敬語にする理由

美来とバムは外から見ていたが切り裂かれた死体を見て美来が口を抑え顔をそらす。

「うぅっ……」

すると突然バムはレゲインの方を見て名前を叫ぶ。

「ゲレイン!!」

「えっ……!」

レゲインはバムの声に反応し後ろを向くと青ざめた。もう一体巨大なマンティコアが立っていたのだ。

「! レゲイン」

美来も気がつく。

「かがんで!!」

バムの声が響きレゲインはとっさに場でうずくまった。

バムはドアを開けるそして――

――カシャッ

一瞬だった、気がつくとマンティコアは足だけになっていて後ろの壁が中央だけを歪な形で残し長方形に消えていた。

レゲインは顔を上げ驚いている。

「何が?」

バムの手にはインスタントカメラが握られていた。

「危なかったぁ〜」

バムは肩の力を抜きレゲインのところへいく。美来もレゲインにに駆け寄るが見た事のない光景を見て声が出ない

「あ……」

「何したんだよ? これ」

レゲインがそう聞くとバムは一枚の写真を渡す。

「! ……これって」

そこには今この場から消えたものが全て写っていた。

「このカメラで撮って写ったものを写真の中に閉じ込めるの」

「凄い……これって魔法なの?」

「そうだよ美来ちゃん、このカメラ自体が魔法具なんだよ。ただ、使うのは魔力だけじゃないけどね」

レゲインは二人をよそに写真を見て震えている。

「どうしたの? レゲイン」

美来がそう聞くと写真の中の想像石を指し示して言った。

「俺らどうやって脱出すんだよ? マンティコアもろとも想像石まで写真の中じゃねーかよ」


「落ち着け。見事だ久しぶりに戦ってるところ見たよ」

校長らしき人物が入ってきた。

「紙を二枚重ねて片方に粘着性の魔術をかけ上の紙を壁につけ、紙同士を結んで巨大な魔法陣をつくる、凄いね」

魔法陣が消えて床に落ちた紙を拾い上げる。

「そのカメラは魔法石と想像石を埋め込んだものだね? レンズは霊石」

話しながらレゲインから写真をとりバムに渡す。

「想像石だけを取り出せるだろ?」

バムは頷き写真を床に置き写っている想像石に竹串を指す。

すると想像石は元の大きさで全く変わらぬ姿で出てきた。

「さすがだよ君たち」

校長らしき人物は想像石のペンダントを拾い上げレゲインに渡す。

「あの、何を?」

「使えるのだろ?」

レゲインは頷き石を両手で包み目を瞑る。少しして周りが光に包まれ気がつくと元いた森の中だった。

「どうなってるの?」

美来は周りを見渡しそう言った。


「校長ー!」

遠くからアウラーとカクランが走ってくる。アウラーは校長らしき人物の手を取り喜んでいる。

「アウラー……」

「よかった校長、無事で」

「アウラー、君は私をそんなにも心配してくれていたのだな、嬉しいよ」

唖然とする三人をよそに涙目で喜んでいる。


「本当に校長だったのかよ」

ただのチビな生徒かと思ったのによ。

校長はレゲインを見て胸を張って言った。

「だから言っているだろう? 私が校長だと」

「大丈夫、レゲイン、僕もこいつの事校長だって信じなかったしよ」

カクランがレゲインにそう言ったがレゲインはお前と一緒にされたくねえと思っていた。


「二人とも死んだ奴たちをこの森から見つけてくれぬか? 確か五、六人はいた」

「はい、分かりました」

アウラーはにっこりとして 了承する。

「想像石は没収されないんですか?」

レゲインが敬語で校長にそう聞く。

「あの場所で死んでしまったやつらはこの森のマンティコアに殺されたのだからな。想像石のせいではあるまい三人とも今日はゆっくり休むと良いだろ早く帰りたまえ」

校長は手で払うようにそう言った。


その夜バムは1人部屋でパンダの人形を抱きしめて座っていた。

「美来ちゃんゲレインと仲良いなぁそのうち私のことなんて」

アルバムを取り出し写真を見る。故郷で撮ったものだ。その中の一枚、昔の親友と一緒撮った色あせた写真を見つめる。

楽しそうに笑っている二人。だがそれを見ている今のバムは悲しさと怒りしか思い出せない。過去の自分は本当に心から楽しかったのかさえ疑っていた。


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