第16話 行方不明の理由

「ふぇぇ、お腹すいた。どうなってるんだ? なんで地下なのにマンティコアまでいるのだ? これじゃあ私が食べられちゃうではないか」

校長は地下をさまよっていた。

「うわあぁぁ! あいつ絶対笑ってる、あのチビ教頭!」

真後ろから気配がして振り向くとマンティコアが五体いた。

「!?」

「グルル」

「うわあぁぁぁ!?」

校長は走って逃げる。

「ひぃっ!?」

針を撃たれるがギリギリ避けていた。


出口が見つからず、バムは心が折れそうになっていた。すると誰かがバムに飛びついてきた。

「わぁっ!?」

「きゃっ!?」

レゲインはぶつかってきた相手の後ろから来るマンティコアに気が付く。

「おい! また来たぞ!」

「まだくるのか!? 早く逃げるぞ」

ぶつかってきた女も一緒に逃げる。


「はぁ、助かった……」

何とか逃げ切り美来は壁にもたれる。

「美来ちゃん大丈夫?」

走るたびにバムに心配されている気がする。

「全くなんだね、あのマンティコアは私を豚肉みたいに見て」

美来達はピンク色の髪をした自分たちより背の低い女をポカンと見ていた。

「ん? どうしたのかね?」

下にいるのに上から目線だ。

「バム、レゲイン、この人だれ?」

美来がそう聞くと二人は顔を見合わせて声をそろえて言った。

「「知らない」」

「なにぃ! この私をしらないだと! 仮にも私は君たちの校長だぞ? 知っていて当たり前じゃないのかい!?」

美来達は怒鳴られ少し引いている。そして声をそろえて言った。

「知らねぇよ」「知らない」「しらないって」

それを聞くと校長は膝をつき落ち込む。

「面倒くさそうな人がまた一人増えたね、バム」

「うん、本当に」

「面倒くさそうってなんだよ? 俺の事だよな?」

レゲインに聞こえていたらしい。

バムと美来は目をそらし更に声をそろえて言った。

「いや、違うかなぁ?」

「まぁまぁ、仲良くしたまえ、早い所こんな所から出て何か食べたいよ」

「想像石見つけないと出れないけどな」

レゲインはまだ校長という事を信じていないらしくタメ口だ。

「想像創設された物なのか!? それでさっきあの部屋が青く光っていたのか」

怒鳴ってくる女を三人は鬱陶しく思っていた。

女が一人でブツブツ言っている間に美来とバム、レゲインはその部屋へ校長を置いて走って向かった。

「えっ? おい? お前たち! どこだ」


「チビの言ってたのってあの部屋か?」

レゲインは青い光の漏れている部屋を見つけて校長らしき人のことをチビという。

「レゲイン、チビって、校長かもしれないのに」

部屋に近づくと足音が聞こえる。三人はそっと入口から覗いた。部屋の中では大きなマンティコアが歩いている。

「あれってマンティコアの大きいやつじゃ? ゲレインどうするの?」

「俺、行ってくる。あの女神の像の手に掛かってるやつ想像石だ」

美来は目を凝らして奥の階段上に立っている像を見る。

「小さいね……レゲイン!?」

見るとレゲインがドアを開け走り込んで行っていた。すぐに巨大なマンティコアがレゲインに気が付き針を撃ってくる。

レゲインは走りながら手に紙を持ち唱える。

「コンメンシルト!」

手元に巨大な魔法陣が現れ針を防ぐとすぐに消えた。マンティコアの左に回り込むとマンティコアはレゲインに突進する。

「スティック」

レゲインは二枚紙を持ち唱えて壁にタッチをしそのまま走り抜ける。

マンティコアはブレーキがきかず壁に激突しひるんでいた。

その間に女神の像の足元にも同じ事をする。そして右側の壁にも手をつき反対側から向かってくるマンティコアに注意しながら入り口前に立つ。紙を投げ片腕で顔を覆い手を出し唱える。

「シュタルクリヒト」

すると強い光が放たれマンティコアの動きが止まる。

「プンクトリーニエドゥルヒファーレン」

さらに別の言葉を唱える。さっきの手をついた場所の高さでそれぞれを通る円が現れ巨大な魔法陣ができる。

「シュヴェールト」

そう唱えきるとマンティコアは真っ二つに斬り裂かれた。そして、魔法陣が消えていった。

「ふぅ……」

 レゲインは一息つく。

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