第15話 珍しく怯える理由

「ケホッケホッ・・・・・・」

レゲインは薄暗い中目を覚ます。自分の腹の上に横たわって気を失っている美来をゆっくり下ろした。

まだ腹部に押された感覚が残っている多分美来が上に落ちたからだろう。

「気持ち悪……腹でここまで気分悪くなるんだな」

上を向くが真っ暗で光すら射し込まない。おかしい、あの森は薄暗くもない明るい森だったのに。

さっきまで森の中で探し物をしていた三人は突然地面が陥没してこの場所に落ちてしまったのだ。

「なに女の子座りしてるの?」

横から目を覚ましたバムが聞いてきた。

「!? うるせえ! 女だってあぐらかいたりするのに男は駄目なのかよ!?」

レゲインは怒鳴りながら正座をする。

「んーうるさいよ……もう少し寝させてよね」

「お前、寝てんじゃなくて気失ってただけだろうが」

「わぁっ!? ここどこ? えっ? 死んだの私」

寝言を言う美来にレゲインが教えると軽いパニックになる。

「美来ちゃん? 生きてるよ?」

「……本当だ脈ある」

バムの言葉で冷静に戻った。

「ねぇ、ゲレインここって森の下だよね? もう夜なの?」

レゲインはゲーム機を取り出し電源を入れて時間を見る。

「いや、まだ三時だ」

「携帯とか時計持ってないの?」

「持ってない」

そう真顔でサラッと言って立ち上がり服についた砂ぼこりを払う。

「何で薄暗いの? もしかして上の部分塞がってる?」

バムは上を見るが天井は見えない。

「薄暗いってか、青っぽいよね。ほら肌が白いバムは青白く見えるよ」

レゲインと美来はバムの方を見る。

「へ? 酷いよ! 私死人みたいだって言うの?」

「青い……光」

レゲインは考え込み柱に触れる。

「あった、俺の想像石こんな所に……」

「ドユコト?」

美来は頬に人差し指をあて首を傾げてる。

「昨日レゲインが言ってたじゃん、想像石は建物まで具現化しちゃうって」

「え、じゃあその建物の中にいるの? でも、石なんて何処にあるの?」

「この建物がどんだけ巨大か分かんねーしその中から石探さねぇといけねぇしな」

レゲインは考え込む。

しばらくしてバムが立ち上がり美来に手を差し出す。

「美来ちゃん、出口探そうかぁ」

美来はバムの手を取り立ち上がる。

「うん、そうだねここに居てもしょうがないしね」

レゲインを置いてそばにある扉を開けてその奥へ行く。

少ししてレゲインは顔を上げた。

「って、待てよ!」

立ち上がり後を追う。


「あれ……なに?」

三人は廊下で止まる。目の前には二体の死体とそれをむさぼる奇妙な生き物がいる。

「あぁっ……」

珍しくバムが怯えていた。 レゲインも顔が引きつっている。

「やべっ、マンティコアだ……」

「なにそれ? ライオンじゃないの?」

やばそうなので美来は小声で聞いた。

「な訳ねぇだろアレの何処がライオンなんだよ……早く静かに別の道にいくぞ」

確かに体はライオンだが尻尾が違うサソリっぽい尻尾だ。

すると「グルル……」と低いうなり声を上げる。気が付かれたようでマンティコアがこちらを向く。

「ひっ、人の顔……」

お爺さんの顔で口には血が付いているそれも一体でなく五体ほどいる。

「み、美来ちゃん背中向けちゃだめだよ撃たれるから」

尻尾の先をこちらに向けてきた。すると何かが飛んでくる。

レゲインは魔法陣の描かれた紙を数枚投げるそして手をかざす。

「シルト」

そう唱えると紙に描いてあるものより大きな魔法陣が現れ飛ばしてきたものを弾いた。片手をそのままにし、もう片手でまた紙を一枚投げ“ボンベ”と唱える。

マンティコアたちの前で攻撃をはじいたものより一回り小さい魔法陣が現れ爆発する。

「今のうちだ逃げるぞ」

元来た道を走り行っていない所へ逃げる。


「はぁ、はぁ、何あれ。気持ち悪い」

「美来ちゃん大丈夫? あれはね魔物の一種だよ人肉を食べる奴」

美来はもう走れそうになかった。バムは心配しながらも美来の疑問に答えた。

「あの森に居たんだろうな。だから立ち入り禁止か」

二人とも息切れはしていないのに歩き出さない、美来の事を思ってだろう。

「けど、ゲレインあれだけの魔法、魔石無しであそこまで使えるって凄いよ」

「元から魔力が高いんだよただ、俺の場合この紙がいるけどな」

紙を見せるとバムが奪い取り見る。そして破いた。

「魔法陣書かれたただの紙?」

「なんてことすんだよ! 数少ないんだぞ! 俺の五分が無駄に、こいつだけは連れてくるんじゃなかった」

「まさか本当にただの紙だとは、ごめんね」

バムは謝っているが反省の色は全く無い。

「ただの紙に決まってんだろ、今持ってる紙も有限なんだよ」

にしても紙の色が黄ばんでいるかなり前に書かれたものに見える。

「もう大丈夫?」

バムが顔を覗き込み聞いてきた。

「うん、行こ」

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