第14話 他人事な理由

「二人でいいだろうが、何で女と居ないといけないんだよ」

美来とバムの後ろを歩きながらレゲインはぶつぶつ文句を言っていた。

「美来ちゃんと二人かと思ったのに」

美来は文句に触れないことにする。

「美来ちゃん、その鍵ってどこの鍵?」

「確かにどこのだろ?」

「鍵についてるタグに書いてあんだろ馬鹿か?」

確認すると確かに書いてあった。

「馬鹿ってなんなの? 私に言ってるの? 大切な物なくした人に言われたくないよ」

バムがレゲインの“馬鹿”と言う言葉に反応し二人の言い合いが始まる。その二人をよそに美来はタグを確認する。

まるでホテルの部屋割りのように『2F202』と書いてあった。

「あ、ここかな?」

それっぽい部屋に着いたが中も普通の教室の半分の広さで机と椅子が数台にパソコンにプリンターが置いてあるだけだ。

「ねぇ、ここだよね? あれ?」

美来が後ろを向くと二人が言い合いながら部屋を素通りして行った。

「本当は覗きでもしてんじゃないの?」

「俺がそんな事するか! てかさっきの話とどういう繋がりがあんだよ」

二人は何の話をしてるのか?

「バム、レゲイン行かないでよ」

美来の声でやっと気が付き戻ってくる。

美来達は中へ入いった。

中は教室の半分の広さで机が六つ向かい合わせにくっつけて椅子と置いてある。

「教室だよね? 美来ちゃん?」

「私に聞かれても……この世界の事知らないのに」

「美来ちゃんそれは言っちゃダメだよゲレインいるのに」

バムはレゲインに聞こえないよう美来に耳打ちをするが、それが聞こえていたのかレゲインが反応した。

「人間って知ってるよ今更隠してどーすんだ? ハム」

「ハムじゃない! 何で言っちゃったの?」

「バム、ばれたんだって」

すると後ろからカクランの声がする。

「知らない奴とグループ組むよりいいだろ?」

「で? カク何の用?」

レゲインがあだ名で聞く。

「あだ名で呼んでいいって言ってないけど。それに女の子限定だし」

カクランはニコニコしたままそう言った。

「俺達、用事あるからまた今度でいいよな」

レゲインは話を切り上げカクランの横を通り抜けようとするが殴り飛ばされた。

――ドカッ!

「いってー!」

フードが脱げて殴られた首元をさすっている。

「わっ……ひっ」

その光景を見ていた美来は震えて口を抑えていた。構わずカクランは説明をする。

「そこの端末で依頼を受けれるよ。休みの日とか放課後だけだからね。あと、数日かけてやるものもあるから、その時は寮監に伝えろよ」

カクランはそれだけ言って出ていった。

「何だよあいつ、殴りやがって」

美来はまだ震えている“いってー”で済むことなの!?

「美来ちゃんお昼食べに行こうよ」

「うん、レゲインも行こう」

「え、なんで俺も……?」

 

「どんな形なの?」

「丸い宝石の形に加工されてたはずなんだけどよ」

困ったように答える。茂みなどを探したが見つからない。

「あったかー?」

レゲインが美来に話しかけるとビクッと飛び上がる。

「ひっ……な、ないよ」

「何だよ、とって食おうってわけじゃねーのによ、んなに震えんなよ」

それはイラついているように聞こえた。

「い、いや、だって恐ろしい光景を見た気がして」

「恐ろしい光景? あ、さっきか。んなに強く殴られてねぇし」

レゲインは平気そうにしている。

本当かな? タフだなぁ。

バムは二人をよそに草むらをかき分け探した。



「んー」

カクランは退屈そうにフォークで皿の上の豆を転がしたりつっついたりする。

何か別の仕事探そうかな? とりあえず三年間やってから考えるか

「カクちゃん? 食欲ないの?」

顔を上げるとアウラーが見ていた。

「そうだね、先の事を考えると食べるどころじゃないのかな?」

「やりたい事がないから? ここに入った理由って警備官になるためじゃなかったの?」

その通りだ、特に憧れるものは無かったが警備官をやりたかった。

「それより、魔女の事ってどうなったの?」

質問には答えず話をそらす。

「魔女はまだ皆んな探してるよ。校長見なかった?」

カクランは驚いてアウラーをみるがいきなり動かしたため首をひねる。

「いって! あの校長が行方不明?」

「うん、前、留守だったじゃん。まだ帰ってないって」

「それって、行方不明だろ! 誰も探さないのかよ?」

「教頭が止めてる……誰も探しに行けないんだよ」

「教頭の考えそうな事だな。このまま行方不明だと副校長として教頭が上がって乗っ取りかねないね。僕も解雇される」

他人事のように笑って言った。

「もう、他人事じゃないよ!」

カクランは正直、クビならそれで良いと思っていた。毎日嫌がらせのように扉に挟まれている手紙のせいで自暴自棄になりかけているのかもしれない。

「何かあったの? 大丈夫?」

アウラーは心配そうに顔を覗き込む。

「大丈夫、何もないよ」

カクランはいつものように微笑んだ。

「他にも生徒が数人行方不明になってて、職員も」

「もしかすると校長もついてるかもね」カクランは心配している気配がない。

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