第12話 離れた理由

美来は少し離れたところをトボトボ歩く。

「は~ぁ、変だって思われたかな? 本当に人の名前以外覚えるの苦手でって言えない。言い訳って思われる」

ふと顔を上げると森の奥からこちらに誰かが向かってくるのが見えた。

人……?

近づいて来るにつれ女だとわかる。周りの木がその女に反応してざわざわと揺れている。それを見た美来は寒気がした。

女は美来の目の前に立ちジーと見つめる。

「あ、あの……何ですか?」

「もしかして、レゲインちゃんのお友達かなぁ? ウフフッ……」

――シャッ

何かが目の前に振り下ろされたかと思うと左肩に痛みがした。

「ギャッ! あっ……」

肩を押さえ後ろに倒れる。

肩から流れてくる血を見て更に痛みが増す。

「こうして遊んであげたら、絶望した表情見れるかしら?」

女の手には剣の様に鋭くなった木の枝が握られていた。ゆっくり近づいてくる。

「ひっいやっ……来ないで」

女は再び枝を振り下ろす。

――ザッ

枝は美来の足をかすめた。

「うっ!」

「やっぱり男の子がいいわね。それか、戦いなれた人」

女はまた美来に振り下ろそうとする。

「ひっ……」

美来の目に涙が浮かぶ。

殺される、そう思い目を強く瞑る。

すると――

「アロウ……」

と言う言葉と同時に上から女めがけて矢が降り注いだ。

美来の目の前に誰かが着地して立つ。目を開き見上げるとレゲインが立っていた。横に白紙の紙が落ちてくる。

女は無傷だ後ろに素早く避けたらしい。

「こいつはただの知り合いだよ、残念だったなヘルバ、俺はこいつが死んでも何ともねぇよ」

レゲインはそう冷たく言った。

ヘルバと呼ばれた女は不気味に笑う。

「フフフフッあらら、レゲインちゃんに見つかっちゃった。あたしの名前覚えててくれたんだ」

レゲインはヘルバを冷たい目で睨む。


物陰でその様子を見ている者がいた。

「っくそ……」

震える体を抑えるように肩を抱えていた。


「こんな子見殺しにすればいいじゃない」

「また魔女に俺の安定した生活を崩されたら困るんだよ、どっか行け」

「今、君と殺り合う気はないからね」

ヘルバが消えたのを確認するとレゲインは美来の前にかがむ。

美来は怯えた目でレゲインを見ていた。

「何だよ?もしかして俺が恐いのか?」

美来は横に頭を振る。

「な、何で? うっ助けてくれたのに怖がらないといけないの?」

「何でもねぇ、てか助けてない。死なれると面倒なんだよ」

そう言って美来の腕を自分の肩に回し立たせる。

「うぐっ……はぁ、はぁ……」

「大丈夫? 歩けるか?」

レゲインは何かと聞いてくるので本当は心配してくれているのだろう。

すると軽い拍手がして物陰からカクランがでてきた。

「レゲイン意外と強いな、美来ちゃん、大丈夫だった?」

レゲインはニコニコしているカクランを鋭い目で見ていた。

「あっ、おい……」

美来が歩けず倒れかけたのをレゲインはが支え仕方なく美来を抱える。

「どけよ」

カクランはそう言われゆっくり横によけ道を開けた。レゲインは睨みつけながら横を通り過ぎる。

睨まれながらカクランは軽く手を振り見送った。

「そうだよな」

カクランはあげていた手を下ろし俯く。

「見ていたのに助けなかったんだもんな。睨まれて当然」

ふさぎ込んでいると声をかけられる。

「あれ? カクラン先生」

振り返るとそこに来たのはバムだった。

「なんで、先生がここに居るんですかぁ?」」

「それ、僕のセリフな。此処は立ち入り禁止区域」

「美来ちゃん知らないですかぁ?」

バムはカクランの話をスルーした。

「ほらオレに見つかったから先に戻ったよ。出口まで送るよ魔女も居るし」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る