第11話 班に入れる理由

「想像源は目に見えない粒子として空気に混ざってる」

カクランはいつもの調子で授業をする。

「半分ほどは触れた気体と同化する。生き物に蓄積される分もあって人によって量が違うんだ」

美来はじっと聞いていたがやっぱり意味が分からない。

お昼を過ぎてからは授業がない。この世界は一ヶ月が六十日もあるからだ。

「外にいる時は一人で行動しないようにな。班は後三日だから」

授業が終わり半数以上が教室から出て行く。

「美来ちゃん! どど、どうしょう!」

「何が?」

「班の話だよ。このままだと美来ちゃんと別になるかも」

「え、えと……班って何だったけ?」

「美来ちゃん……一日経つと忘れてるよね」

そう話しているとフードを被ったレゲインが話しかけてくる。

「昨日の約束覚えてるか?」

「ここにメモってあるから大丈夫だよ」

美来は得意げに手帳を見せる。

「あ、班の事も書いてあった」

「毎回説明してたのは何だったの?」

美来はそんなバムの言葉は耳に入らないようで、既にカクランの所へ行っている。

「カクラン、班のメンバー決まったよ」

「それって、もう一人も女の子なのかな? 毎日美来の班の部屋に通おうかな」

紙を渡しながらやばいことを言っている。

「男子だよ?」

「あ、……うん、そう」

美来は何食わぬ顔で紙を持って戻ってくる。

「美来ちゃん、先生可哀想」

バムをよそに美来は三人の名前を記入する。それを見たレゲインとバムは驚く。

「はぁ!? 何で、俺が二人の班に入るんだよ!?」

「そうだよ! 美来ちゃん、何でゲレインなの!?」

「いいでしょ? レゲイン一人だし。このままだと、バムと離されるかも」

美来がそう言うと二人とも口をつむぐ。

「確かに紙は預かったよ。はい、鍵。毎日手土産持って行くからね」

「うん、遠慮するね」

カクランから鍵を受けとり教室を出る。

「美来ちゃん先生の扱いがぁ」

「何?」

美来に自覚は無かった。

「何で俺まで」

「いいでしょ? 他に当ても無いだろうし。それに、見つかるまで一緒に探すから」

「放浪者みてぇに言うなよ。まあ、それなら受け入れてもいいけど」

「美来ちゃん、私は反対だよ?」

「なんで? これで、バムと同じ班になれたのに」

そう言うとバムは黙り込んでしまった。

外に出たところで口を開いた。

「美来ちゃん、私、ちょっと用事思い出したから先に行ってて」

バムは軽く手を振り走って行った。

「どうしたんだろ?」

「さぁ? 早く行こうぜ」

気になったがレゲインと森へ向かう。


「せっかく班の申請書持ってきたのに、校長どこ行ったんだよ」

カクランは紙の束を脇に抱え建物から出てくる。紙の束を腕に抱えたアウラーとすれ違う。

「あ。アウラー」

「なに? カクちゃん」

「校長、昨日から留守だって」

「え、珍しい。家畜の薬とか頼みに来たのに」

アウラーは残念そうに行く方向を変える。

「それって今日じゃないとダメなんじゃ?」

「医療館に居る先生に頼みに行く。校長の事心配しないの?」

「別に心配じゃない」

するとアウラーが目の前に出てきて言った。

「カクラン! 何で校長には優しくしないの? 校長だって女の子じゃん!」

「っなんだよ……優しくしたらたらしって言うくせに。何かあの校長苦手なんだよ……わりぃ、アウラー、これオレの机の上に置いといて」

何かが目に付いたらしく紙の束をアウラーに押し付け有無を言わせず駆けて行ってしまった。


美来はレゲインと昨日光の見えた所で想像石を探していた。

「どんな形してるの?」

「ペンダントだよ。青色の石の」

「何探してたんだっけ?」

「え……想像石ですけど!? 普通、忘れるか?」

「あ、うん。そうだね。エへへ……向こうの方探してくるね」

美来はごまかすようにその場を離れる。

レゲインはその場に残って探し続けていた。

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