第9話 暗闇が平気な理由
「痛っ何なんだよいきなり人を蹴飛ばしやがって」
さっきから俺を尾行して。更に蹴り飛ばしやがってよ。
美来は睨まれると慌てて謝りだした。
「ご、ごめんなさい! 蹴とばすつもりはなかったんです!」
バムはホッとして肩の力を抜く。
「魔女じゃない……よかったぁ〜」
「俺のどこが女だよ、魔女なわけねーだろ」
「大丈夫じゃなかったぁ、木に引っかかってた人は君が殺ったの!?」
こいつ話聞かねーやつだ。
「はい? 何のことだよ殺ったって。俺知らねーけど死体なんてあったか?」
二人は安堵のため息をつく。
「えーと? バムとびらい?」
美来は慌てて訂正しようとする。
「びらいじゃない!!」
「美来ちゃんだよ! 君は誰なの?」
フードの子は少し間を空けて答える。
「レゲイン。尾行しといて疑って蹴り飛ばすってよ、お前らどうかしる」
美来は自分が一番責められてる気がした。
「本当にごめん……」
「美来ちゃん謝んなくていいよ。暗闇の中でうずくまってた方が悪いって。それに真っ暗な中何してるの?」
蹴飛ばされた俺の身になってくれ。
レゲインはムッとして答える。
「こないだ無くしたものを探してんだ。高価なものだし」
真っ暗なのに一体どうやって探していたのだろう?
「暗くて見えないのに?」
「俺コウモリだし、お前らと違って真っ暗でも平気なんだけど?」
通りでつまづくわけだ。
「じ、じゃあさ、あれ殺ったの誰?」
バムとレゲインは美来を見て考え込む。
「俺は殺ってねーからな。その死体ってどこにあったんだよ?」
無実を主張して場所を聞いてきたのでバムと美来はレゲインを死体のある場所に案内する。
「これだよ」
バムは死体を見るが美来は見ないように俯いた。
「うっ……ひでぇ、腹が斬り裂かれてんじゃん。つーか、あのナンパしてた奴に報告した方がいいだろ?」
ごもっともです。下手に疑われやすそうな事をするより良いだろう。
「私、カクラン先生に言ってくるね!」
バムはカクランを呼びに走って行った。
二人になり気まずくなる。数分たつとレゲインが美来の方を見てきたので美来は更に居ずらくなる。
「お前ってさ、人間?」
「えっ!? そっ違うよ!」
いきなり聞かれて思わずそうだと言いかけたがバムに言われたことを思い出し否定する。
「嘘だろ人間だろ。じゃあさ、逆に何なんだよ?」
「そ、それは……ね、猫!」
パッと思いついたことを言うがレゲインは疑った目で見る。
「知ってるか? 魔女って一目見ただけでそいつが何の種族か分かるんだとよ」
「ひっ……」
耳元で不気味に囁くので鳥肌が立ち少し身を引く。
「俺、男だって言ってんだろ魔女なわけあるかよ」
そういう問題じゃない気がする。
「ご、ごめん」
「大丈夫だ、お前が人間だって誰にも言わねーし。それと、昨日は悪かっな……あいつら俺に喧嘩売ってきて、放ってたら石を取り上げてそのまま美来の所に飛んでって」
美来は驚いた。謝れない奴だと思っていたレゲインが謝ってきたからだ。
「謝れるんだ」
「なんだよ、まるで俺が謝れない奴みたいに言うなよ」
そうだと思ってたからだよ。
「あれ? カクラン先生何処? ここでナンパしてた筈なのに」
バムがキョロキョロしていると牛の女の子に話しかけられた。
「どうしたの? カクラン探してる?」
「へ? うん」
「カクちゃんなら向こうで昼食を食べてるよ」
この人先生? カクちゃんって、先生じゃなくて、キャバクラのお姉さん?
バムは一人でありもしない事を考えていた。
カクランのいる店の前につくが店の中で夢中で昼食を食べているのを見ると話しかけずらい。
怒られたらどうしよう。
「あれ? 美来は?」
カクランの方が気がついて出てきてくれた。事情を話しながらあの場所に連れて行く。
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