第8話 好奇心の理由

「バム、グループどうするの?」

そう切り出すとバムは考え込む。

「私は、美来ちゃんと組みたいなぁ」

「でも、あと一人いるよ?」

グループは三人以上居なければ組めないのだ。

もう一人のアテはないしいっそカクランが入れればいいのに。

「美来ちゃん美来ちゃん」

バムが肩をトントンと叩いて呼んで遠くを指差す。示す方を見るとフードの子がこそこそしている。

「怪しいよね、追ってみよ?」

怪しい奴に関わるなんてフラグでしかない。アニメでしかないような展開……今こころよく話せる相手はバムしか居ないので断って嫌われるのは避けたい。

美来は考えて行くことにした。

森の奥まで行くと立入禁止という看板とロープが張ってある。フードの子が入って行くのが見えた。

「あの先行っちゃいけない所なのに」

そう言いながらもバムは奥へ行こうとする。

「バム? やめた方がいいよ……」

美来は袖を引き引き止める。

「え、でも……」

すぐそばから水溜まりに水滴が落ちる音が聞こえ黙る。バムと美来はしばらくその音を聞いていた。

しばらくしてバムが口を開く。

「水の音? あんまり綺麗な音じゃないね」

言われてみればネットリとした音だ。結局、ロープの向こう側に行き音の正体を確認する。木の下には赤黒い水溜りができていた。

美来は匂いに思わず顔をしかめ手で鼻を覆う。

「うっ……これって血だよね?」

バムは特に気にならないようだ。

「そうだね。美来ちゃん大丈夫? 顔色悪いけど」

心配そうに覗き込んでくる。

「うん大丈夫」

チラッと木の上を見たが死体が枝に引っ掛っているのが見え直ぐに目線を血の方に移す。

「本当に大丈夫?」

大丈夫? ってバムは頭がおかしいの? こんな物初めて見た。なんでバムは平気な顔をしてるの?

「美来ちゃん、こういうの見るの初めて?」

美来は無言で頷く。バムは死体を見るのは初めてではないようだった。

「こ、これってさっきのフードの子?」

「違う。見たことない人だよ」

「ってことは、そのフードの子が殺ったのかな?」

美来がそう聞くとバムは何故かワクワクしたように言う。

「ねぇねぇ、確認してみようよ」

美来は唖然とする。

「何で? あの子が犯人だったら私達も危ないよ。それに魔女だったらどうするの?」

魔女と言うと、さすがにバムはひきつった表情をする。

「ほ、ほらぁ、犯人見つけた方がぁ、評価してもらえるんじゃないかなぁ?」

意地でも探究心を優先したいようだ。

「分かった。何処行ったか分かるの?」

ついて行く事にするとバムは周りを見て歩き出す。



「何をいっているのですか? おごってくれるのですか?」

女子生徒がカクランの一言で困っていた。

「空いてないかな? 皆んなこうやって誘うと何故か逃げちゃってね」

「当たり前なのですよ……お母様にそういう人には関わってはいけないと言われたのですよ」

申し訳なさそうにカクランにそう言う。

あ、オレ、危ない人か……

「駄目かな?」

困った顔でそう聞き直すと女子生徒は本を抱え直し丁重に断り行ってしまった。

「あー……」

行ってしまった後にカクランは明らかに落ち込む。頭の中で知り合いと自分を比べる。

あいつの方が人気あるよなぁ……。

美来達どこ行っても見当たらないな。あとフードの暗い奴も。



美来とバムは奥の深そうな洞窟の前に来ていた。

「ねぇ、入るの? 暗いよ?」

「大丈夫だよ魔石を持ってきたから」

紫色の石を取り出す。

「それをどうするの?」

「これは、呪文を唱えると明かりになるんだよ」

バムは石を両手で包むように持ち「リヒト」と唱える。すると石は浮かび光りだした。

「お……どうなってんの?」

美来は不思議そうに光を眺める。

「魔法だよ」

「私にもできるかな?」

バムに石を投げ渡され思わず避けた。

「美来ちゃん、触っても大丈夫だよ」

そう言われ恐る恐る取り上げ、同じように唱える。

「リヒト……あれ?」

一瞬にぶく光ったがすぐに消えてしまった。失敗したらしい。

「信じること、イメージが大切だよ?」

「信じるって、イメージって。んー」

これは石に内積されている魔力しか使わないので誰でもできるらしい。

洞窟の奥へ進んで行くと石の光も一緒にふわふわと浮いてついてくる。夜中に見たら人魂と勘違いしそうだ。

しばらく進むと奥から物音が近づいて来る。何かを掘っているような……。

「死体埋める穴でも掘ってるのかなぁ?」

バムはそう言けど、縁起でもないことサラッと言わないでほしい。私達も埋められてしまうかもしれない。

奥に行くにつれて音が大きくなる。

すると暗がりの中美来が何かにつまずきこけた。

「きゃっ!?」

「うわっ!?」

美来の声に重なってもう一つ声が聞こえた。

「美来ちゃん!? 大丈夫!?」

美来は身を起こし座る。前を見るとあのフードの子人がいた。いうのもフードが外れていてイメージに合わない箇所があったからだ。

綺麗な金髪のショート、少し睨んでいる気もするが、鋭い目つきで透き通るような紫色の瞳をしている。頭には何かの耳が付いた布をカチューシャのように巻き後ろで結んでいた。それに、男の子のようだ。

獣耳がついた物を着けていると拍子抜けする。怖がって損した気分だ 。

バムもジーとその子を見ている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る