第7話 寝不足の理由
カクランは寝不足で重たい瞼をこすりベットから出た。
昨晩は冷や汗と震えが止まらなくなり危うく過呼吸になりかけて眠れなかったのだ。
美来と別れた後カクランは自分の部屋に戻り、いつものように何気なくドアを開けたそこまでは良かったのだ。だが開けると同時にドアに挟まれた白い封筒が落ちてきた。
「何だこれ」
明かりを点けベットに腰掛け手紙を開けた。
内容に目を通し青ざめる。吐き気がして口を押え涙目になる。
なんだこれ、誰が……僕は知らない。
手紙は自分の霊力を使った青い狐火で燃え始める。皿の上に置き空いた両手で腕を抱え震える。
そのうちに青かった炎は普通の炎の色になっていた。
何とか起き上がりふらふらとシャワーを浴びに向かった。その後は落ち着き眠ることができた。
「だりぃ……」
皿の上の灰には目もくれず身支度をし部屋をでた。
美来は昨日と同じ席に座る。今日はバムと一緒に来たので迷うことはなかった。
「おはよう、美来さん。」
私の席まで来て話しかけてきたのは兎耳の付いた帽子を被った黒髪のショートヘアーの女子だった。
「お、おはよう」
「あたしは、ソテよ。よろしくね、人間の美来さん」
まるで見下されている感じがした。
「よろしく」
「挨拶はもう少し爽やかにお願いできるかしらそんな詰まりながらされると気分が悪いのよ」
「どうだろう? 私、物覚えが悪いから忘れてるかも」
ソテが何か言おうとするとバムが口を挟む。
「私はバムだよ。よろしくね? ソテーちゃん」
「あたしは料理じゃないのよ!? 伸ばして言わないでもらえるかしら?」
「え~無理かも」
バムがそう言うと明らかに機嫌が悪くなる。
すると勢いよくドアが開きカクランが入ってきた。それに気が付き皆が席に着く。
「授業の前に、説明することがある」
中からジャラジャラと音のする箱を台に置く。
「二週間の間に三人以上四人以下のグループを組んでもらう。このグループは、摸擬戦とか依頼を受けるときに一緒に行動する班でグループにはそれぞれに小部屋が借されるから組む相手が決まったら僕の所に来て。そした鍵を渡すよ」
「入れなかったらどうなるの?」
「僕が勝手に決める。依頼は報酬も出るから」
それだけ言って授業に移る。
その日は休みだったので美来はバムと一緒に店街を廻っていた。
学校なのにゲームやなんかのアニメのグッズがかなり売っている。
「普通、ゲームとか禁止にされそうだけど」
「買う人は少ないと思うけど。創造した世界だし」
つまりこの世界の想像者はアニメオタクなのだろう。
私はアイドルの方が好き。ゲームは暇つぶしに使えそうだけど。
「人少ないね。あんまり他の学年の人見ないよね?」
「他の学年の子とは滅多に予定が被らないようになってるんだよ。ああいう人が居るから」
バムが指さした先には見覚えのある人がナンパをしているように見えた。
「バム、あれカクランだよね……?」
狐耳のカチューシャを付けてはいないが確かにカクランだ。
「カクラン先生〜」
バムが呼ぶと気がつき走って来た。
「どうしたの? 僕に何か用?」
何事も無いように聞いてくるがさっきやっていたことを問うと。
「な、ナンパなんて学校でするわけないだろ? 誰も相手に……じゃなくて、オレはまともに仕事してたんだよ」
美来とバムは声をそろえて聞き返す。
「仕事?」
「ぐっ……なんだよ、その疑った目は」
「この人のせいで予定が被らないようにされたんだね」
納得したように美来が言った。
「前からだから僕のせいじゃないよ……あと、ちゃんと仕事だよ」
「ナンパが?」
バムの言葉に美来は笑いをこらえる。
「ち、違う! 二人ともそのワードから離れてくれないか? 見廻りだよ」
カクランは少し近づいて小声で言う。
「魔女が紛れてて、一人倒れたんだってさ」
「魔女って?」
美来の一言でカクランとバムがシーンとした。
気まずくなってからカクランが説明を始める。
「魔女は女性だけの種族で普通の人間の女性と見分けが付かなくて魔力しか持たない奴らだよ」
説明してくれたがよく分からなかったため、
「まぁ、普通に魔女なんだろう」
と美来は理解する。
「倒れたって?」
「魂抜かれたって方が正確だな」
バムは普通に驚いていたが美来にとっては現実とかけ離れ過ぎて驚く前にポカンとしていた。
「美来はそのうちわかるよ。君ら二人とも気をつけてね?」
バムも美来も素直に“はーい”と返事をするとカクランはさっきの場所へ戻り同じ事をしていた。
「可愛いのにねー」
「何が?」
「ん? カクラン先生のことだよ? でも好みじゃないなぁ」
いつから好みの話になったのだろう? 可愛いとは思う男だけど。いつも明るい、ペットとかっていつも明るいし。
あれ? 狐って犬じゃない?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます