第6話 呼んだ理由

台の上に置いてある石を取りカクランは説明書をする。透きとおるような紫色の石だ。

「この石は魔石で、自然にできたものと人が魔力を込めて作った物の二つがある。自然にできた物は勝手に暴発したり幻覚を見せたり危ないから気をつけろ」

誰かが静に手を挙げそのまま話し出す。

「それって見分けれますか? それはどちらですか?」

「無理だだからとりあえず触らないように。作ったものに決まってるだろ」

それぐらい察しろというような言い方だ。そんな危ないものを持つはずない。

質問をした子はムッとして手を下げた。

カクランは次に青い石を取る。

「こっちは想像石。この世界特有の石で人工的に作ることができないものだ。これはまた説明するからむやみに触らないこと」

美来は説明をよそにフードを深く被った子を見ていた。

「美来ちゃん? どうかしたの?」

「うん、あの子」

バムは美来の陰からその子を見る。

「変わった子だね。一人でいる子ってあんまりいないし、皆んな小さいグループ作ってるから」

カクランはこちらを気にしつつ続けた。

「霊石は事故現場などに多くあるんだけど、知らない奴事故っても知らないからな」

バムと美来は前を向く。

やばいかも魔石とか危ないって言ってたし……今から何するんだろ?

「今からその石を採掘してもらう。流石に霊石は此処にはないけどね」

犬耳の髪飾りを着けた男子が聞いた。

「何で無いの?」

その質問に対して答えたのは隣の眠たそうな子だった。

「事故現場だったら危ないじゃんzz」

話しながら確実に寝かけている。頭にナマケモノのアイマスクも掛けてある。

「石は武器を作るのに使って特別な作用をつけることができる。よく使うもので売ってる物もあるけど高いから自分達で装備を整える事も必要だよ」

普通ならここで「えー」の一言があってもおかしくないが皆んなシーンとしていた。

「じゃあ僕は見て廻るよ。ここに道具があるかね。水道もそこにあるよ」

石を掘り出す事になった。


その夜バムと同じ机で夕食を食べた。

「美来ちゃん食べないの? 貰っていい?」

よそを見ていると隣からバムが私の物に手をつけようとした。

「え? 食べるよ!」

もう少しで食べられるところだった。


「あー!!」


突然上げられた声と共に美来の所に何かが飛んできて思わず受け止める。

――バチッ!

音と手にピリッと痛みがして思わず落とす。

「きゃっ!」

周りがシーンとして皆んなこっちを見ている中、フードを被ってる子が来て何も言わず石を拾って戻っていった。

「美来ちゃん大丈夫だったぁ?」

「うん、大丈夫だけど……」

フードを被ってる子の周りでは少し反省したように男子二人が俯いている。

多分フードの子をからかっていたのだろう。

「寒気とかしない?」

「え? 大丈夫だけどなんで?」

「さっきの白い透明の石は霊石っていって霊に乗り移られたりするんだよ? こないだカクランが言ってた」

「カクランって?」

「先生だよ、狐耳の髪の長い」

そういえばカクランっていう名前だった気がする。あ、撹乱で覚えておこう。

「私、もう寝るねおやすみ」

「うん、おやすみバム」

バムは立ち上がり先に部屋に戻って行った。

「美来……」

美来も戻ろうとした時何処からか小声で呼ばれた。周りを見渡すと入り口の物陰から誰かが手招きをしている。

行こうか迷ってるとさっきより聞き取りやすい声で呼ばれる。

「美来ちゃんって」

その声でやっと誰か分かり外へ出る。


もう真っ暗だ。その前に誰もいない。

すると、木の上から話かけられる。

「今日は、曇ってるね」

「! えっと撹乱……」

驚いた反動でつい言ってしまった。

「気のせいかな発音が名前じゃなかった気がするんだけど。僕、誰も撹乱させた覚えないんだけどな」

「撹乱先生?」

「俺の名前学ランみたいに発音すると名前じゃなくなるよ。女の子だし僕に先生付けずカクランって呼んでよね」

「先生、何の用ですか?」

縋るように言われたのでスルーしたがショックだったのかカクランは落ち込んでいる。

「うん、ごめんね、僕が逆に言いくるめられちゃってさ、本当にごめんね」

手を軽く合わせ首を傾げて申し訳なさそうに苦笑いをしている。その仕草が女の子のようだった。

「え? 三日間たったので忘れてた」

カクランはポカンとしていた。

「カクランって男なの?」

唐突すぎる。僕、根っからの男だよ、聞かれたの初めてだよ……。

「僕は普通に男なんだけど、動物のせいかそういう人全く見ないしね。居ることには居るけど」

「ごめんなさい、純血の狐でしたよね」

「この世界に純血があるのは普通の動物だけだと思う。僕らは人間の姿で居れるんだから。子供は父親か母親のどちらかの種族に寄るけど」

私、今カクランの事、困らせてしまってるような、凄く申し訳なくなってきた。

「ごめん。あ、私もう寝るねおやすみなさい」

「おやすみ」

強引に話を閉め美来は行ってしまった。

なんか大丈夫そうだな。このまま美来に何もないといいんだけど。

「髪型、変えたほうがいいかな?」


美来はフードの子を思い出すと無性に腹がたつ。

なんで謝んなかったのかな?

撹乱。いや、カクランは男だった。

考えていると色々と気になってしまう。

バムは私のことどう思ってるのかな?

考えているうちに眠っていた。

三年間平凡に暮らせますように。

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