第5話 種族を言ってはいけない理由

「君は何が言いたいんだい?」

オレは美来のことを校長に話にきていた。相手は校長だ敬語で話さないと。

「美来を元の世界に返してほしいのです」

校長はオレを睨む。

「無理だよ。君に任せただろ」

「ですが、美来は異世界の事は知りません。それに他世界から強制的に連れて来ることは禁止されているでしょう? 他世界の存在に気が付いていない世界から拉致してくるなんて・・・・・・」

校長に呆れたようなため息をつかれた。

「試験の数日前に全て説明しただろ?」

「え?」

拉致するということしか聞いていない。

「あれ? 話していなかったか? じゃあ今話すよ。美来のことは王妃などに了承をえているよ」

「!? まさか、でも何故?」

「君も知っているだろ? 異世界の事を知るべきだと違法に他世界へ行く団体を」

その話を聞き、数日間の事を思い出す。

確か偶然つけていたテレビで言っていた気がする。

「あの団体は一般の団体で政府も特に抑えるのに手を焼くことなんて無かったはずじゃ」

すると意外だという顔をされる。

「無知だと思っていたよ」

褒められてる? ……え? こいつ俺を馬鹿にしてる! まだ団体の行動を話してないのにこう言われるってことはその団体の事自体知らないと思われてる。

「魔女がその団体を利用したんだ何かを企んでいる」

「魔女が企んでいるのはいつものことでしょ。魔女絡みならドラゴンが……」

「協力は無いんだ、ドラゴン達にはこのことは知られていない。嫌っている者が多いせいだ」

言葉を遮られそう言われた。校長も歯がゆいのだろう怒っているようだ。

「また差別か。人間だけじゃなくドラゴンまで。美来のクラスを変えて下さい」

すると校長は突然机に手を突き身を乗り出した。

「トラウマを理由に逃げ出して教師になった君に拒否権はないのだよ!! 少しは向き合ったらどうだい? とにかく美来を頼んだよ」

こう怒鳴られると返す言葉が無かった。

「失礼しました」

出て行こうとすると忠告を受ける。

「ドラゴンに言ってはいけないぞ。君だけならともかく私も危なくなるからな」

やろうとしていた事を止められた。あいつに言えばチクられるうえにアリもしない罪が加算されそうだ、やめておこう。


「やっと着いた……」

美来は校舎の中を二時間さまよい教室についた。遅刻だと思い中へ入ったが狐の先生が居なく皆自由にしている。

何か問題でもあったのかな?

入口で立って心配しているとパンダの子が呼んでいた。

「美来ちゃん早く座りなよ」

バムだったけ? 初めからちゃんづけなんだ。

美来が席に着くと勢いよくドアが開きカクランが走り込んできた。

「あの先生さっき見かけたのに来るの遅いね。そういえば校内地図見て教室と逆に行ってたなぁ」

バムが美来にそう言った。バムは少し独特な話し方をする。「あ」を母音にもつ言葉が語尾にくると伸ばす癖があるようだ。

私は狐の先生が遅れた理由に気づきバムに小声で教える。

「それ、道に迷ってたんだよ?」

「え。先生がぁ? 助けてあげたほうがよかったかなぁ」

カクランは前に立つ。

「悪い、寝坊した上に道に迷った」

よっぽど急いでいたのか髪が乱れている。

正直か! てか教師だろ寝坊するなよ。

空気が冷たくなり皆んな狐の先生を冷たい目で見ていた。気にしないで話を続ける。

「自己紹介とかは各々でやっといてくれ。立ち入り禁止の場所は入るなよ面倒くさい奴に叱られるからね。次の授業で立ち入り禁止の森の洞窟前に集合なだから遅れるなよ。」

それだけ言って出て行った。

皆んなしばらく席に着きっぱなしだったが終わって移動する時間だと気がつき席を立ちはじめた。

「え? 終わったの?」

独り言のような言葉にバムが応えてくれる。

「終わったみたい、分かりにくいね。行こうか美来ちゃん洞窟前だってさぁ」

バムと洞窟へ向かう。

「私はパンダだけど美来ちゃんは何の種族なの?」

何を聞かれているか分からなかった。

「え? 種族?」

「えっ?ほら、犬とか猫とか狐とか」

「に、人間」

凄く驚かれて小声で聞き返される。

「えっ! 人間なの?」

「うん、に……」

「しーっ!」

そう言われて慌てて口をつむぐ。

「誰にも言っちゃいけないよ?」

「何で言っちゃいけないの?」

「この世界だと人間はよく差別されて虐められたりするからぁ」

周りに聞こえないように小声でそう教えてくれた。


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