第2話 皆が若い理由

カクランは走って職員室へ駆け込み自分の名前の書いてある席に座り前を向く。

「えー担任になる皆様には、今年初めの大切な仕事があります」

前に立って話しているのは十三歳ぐらいの男の子だ。普通なら異様な光景だろう。この世界ではオレが産まれて数年後世界変動というものがあり生きた年数齢をとることはなく齢のとりかたは人それぞれになった。更に一定の齢になると成長がとまったりした。それも人それぞれで規則性は無かった。

齢と言っても単純に老いなくなっただけであるアニメなどのキャラクターのように。だから死ぬ人もほとんどいない。

ただ、時間はちゃんと過ぎていくので精神的には成長している。

前に立って話しているやつも十三年以上生きている多分オレより年上だ。

「今回、入学試験を受けに来る生徒を今年の担任分に分け自分の生徒になる者の審査をしてもらいます」

この学校は受験を受ける前から担任が決まっている。

試験を受けるとき試験官としてその場にいる者が担任であり審査をする人であり試験を考える本人なのだ。

つまり、それぞれ受験内容が違い難易度も変わる。細かい指定が無いので気分で落とされることもある。当たり前だ、なにしろ担任はこれから最低三年間受け持つ生徒を自分で選ぶのだから問題を起こさないやつがいいに決まっている。

それぞれの担任に自分が受け持つ受験生の名簿が配られる。そこには受験生の名前と会場かつ教室の場所が載っていた。鍵も一緒だ。



長い黒髪をしてどこかの制服を着た十五歳ぐらいの女の子が船の上で遠くを眺めていた。

「ここ、どこなの?」

目に入る光景は青く広い空と海。と、なんだか異様な光景。あそこで笹を食べているのはどう見てもパンダそのものだ。私の勘違いじゃなければあのパンダ文句を言っている。

動物の鳴き声がそう聞こえるわけではなく本当に言葉を話している。

おかしい、おかしいよ。何で? そもそも船になんて乗ってなかった。なのに、ここは船の上だ。

確かさっきまで家を出て何とか進学の決まった高校の入学式に向かっていたはずだ。

それが気がつくとこの場所に・・・・・・。

「はぁ・・・・・・」

重たいため息をつき家を出る前の光景を思い出す。


「美来、大丈夫? お母さん行けないけど道に迷わないようにね?」

母親が心配そうに言った。急いでいたので早口で答える。

「大丈夫、迷ったら人に聞くから」

転びかけながらも家を出た。

走っている途中に視界がこの場所に移ったのだ。


これは確実に遅刻だ。

「お母さん、迷ったけど、取り返しのつかない妄想に迷い込んだよぅ・・・・・・」 心配してるだろうな。自分がここまで方向音痴だなんて。

美来がいろいろと後悔をしているとイルカのような被り物をした船員がでてきた。

「受験生の皆様、もう間もなくリスター島に到着いたします。お忘れ物の無いよう降りる用意をしておいてください。」

美来の頭に浮かんだ言葉は「リスタート? うぅっ出来るものならしたい」

きっと悪い夢を見ている。まだ夜中で朝じゃないんだ。

美来はそう思うことにした。


船は島に着きぞろぞろと人が降りていく。よく見れば皆独特な服装をしていて美来だけ浮いているような感じがする。

「こ、これは、夢だから大丈夫」

そう、夢・・・・・・誰も私のことは見てないから夢だ。

船から降りるとき紙を渡された。どうやら受験の会場の場所が書かれているようだ。

すぐ目の前に校内の見取り図があったので確認する。


確認して自分の会場に向かったはずが迷いまくった。

「夢なら方向音痴ぐらいなくしてよ」

文句を言いながらも何とかたどり着いた。さすがに遅れただろうな悪夢になりそう。

美来はそんなことを思いながら入るが中は静かなもののまだ始まっていないようだった。本を読んでいたり机に伏せていたり物騒な武器の手入れをしている人、完全に眠っている人までいた。

ここはどれだけ自由なのだろうか? 髪の毛の色は皆違いすぎるだが染めたわけでもなさそうだ。



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