第1想 拉致された者の出会い

第1話 出会い

ジリリリ……。

頭に響く目覚まし時計の音で目が覚めた。

こんなものなくても起きられるのに、うるさいなぁ。いや、こないだ卒業式に寝坊をするところだった。

目覚ましを止め寝癖がついた頭をかく。

「あ……」

いつも付けているはずの狐耳のカチューシャが無いのに気がついた。寝相が悪くて外れたのだろう。

もし、オレが人間なら絶対に着けない。だが、オレは人間じゃない。オレの今生きているこの世界はオレらにとっては現実だ。他の世界の奴らから視れば二次元だったりするのだろう。ここも、他の世界も、それぞれ違う何処かの世界の誰かが想像した創造世界なのだ。

掛け布団をかき分けカチューシャを見つけた。

この世界ではほとんどが世間から離れて暮らしているドラゴン、世間に関わる少数の人間、ティーアメンシュと呼ばれる人の姿にもなれ話せる動物、世間に紛れこれらと敵対する魔女、普通の虫や動物、植物、魔物が住んでいる。


 オレは、本当は、狐だ。


ドラゴンだって人の姿になれる。でも、人の姿になってもドラゴンということを主張する物は瞳以外ない。オレらティーアメンシュは、人になったとき服装などに特徴が現れる。迷惑な話だ。壊れることは滅多にないものの、それがないと動物の姿に戻れない。外したり壊したりして戻ると怪我をしたか千切れたとして現れる。壊れたら戻らないと治らないから仕方ない。この世界の奴らはこの世界が出来た時から他の世界に気が付いていて存在が確認できる世界同士交流がある。

他の世界からは、こう呼ばれている


プハンタシアワールド1071 ころころ変わる世界


何を考えて、どういう性格でこうなった? 創造者本人に聞いてみたいぐらいだ。

まぁ、多分、主人公と遇わないであろう脇役中の脇役の俺のことなんて知らないだろう。

ベットから降り、少し散らかっている部屋を見てため息をつく。

洗面所の鏡の前に行き自分を見る。

寝過ぎだ。目に隈は無いが、眠そうだ。

肩まである焦げ茶色の髪が水に濡れないよう顔を洗い寝癖をくしで梳いて直す。左目を覆っている左半分の長い前髪を横髪の下を通し左耳に掛ける。寝るときから着ている長袖の襟黒シャツの上に、グレーのフードのない上着をはおり少し緩いズボンに履き替える。後ろに回ってしまっていた十字のペンダントを直し本来の髪を上げる役目をしない狐耳のカチューシャを着ける。

これが、普段の格好。考えなくていい楽な格好だ。

時間を確認して朝食の用意をする。焼いた食パン二枚にマーガリンを塗りたくったものに牛乳。少ないとよく言われるが、朝はあまり食べられないから仕方ない、食べる速度は早い。目が覚めれば結構食べられる、どこかの女子じゃないこれでも男だから。

まあ、女装しても違和感ないだろうけど。

よく見ると時間が差し迫っていた。

「ん! やべっ」

急いで部屋を出ていく。

就職早々遅刻するわけにはいかない、廊下を走る。


校舎への道を歩いていると

「カクラ~ン」

後ろから名前を呼ばれる。声の主の女は横に来てまた俺の名前を呼ぶ。

「カクランてば、無視しないでよ! 殴るよ、動けなくするよ、半殺しにするよ」

空を殴る蹴るをしているのが視界の端に映る。

「アウラー、君には人にそういうことができないから、強制的に教師かただ卒業するかの選択しか与えられなかったんだろ?」

「そんな事ないもん! だいたい何でカクランも教師としているの? あの成績ならいろんな選択肢あったでしょ?」

アウラーは前に出てきて膨れっ面で言った。

「そうだな、君と居たかったからかな?」

冗談半分で言うとアウラーは膨れたまま呆れた目で見てくる。

「変態、女好き! 見かけ倒し! 本当のこと言ってよ!」

酷い言われようだ。確かに女好きだ、でも変態ではない。

付き合ったこともなければ襲ったこともないしそんな経験は全くない。こう言われるのは、初めてではないが・・・・・・。

「見かけ倒しって初めて言われたんだけど」

見かけ倒しは、ショックだった。いくらなんでも女の子に言われるだなんて。

立ち直れない・・・・・・もう、帰りたい、自分の部屋に

「あっ急がないと! あと五分だ」

アウラーはカクランと話ていたことを忘れ走っていった。

「牛の女が・・・・・・」

ボソッと言ったが決して悪口ではない。心の中で言い直そう。

 牛の女の子

アウラーは可愛らしい牛なのだ。

異空次元警備学校二年の時に授業でペアにされてから仲良くなったおっとりした牛の女の子。牛だけど人の姿のときは可愛らしいのだ。

アウラーの話はもういい、女性は皆可愛い。

オレも急がないと。

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