6.nobody knows

「杏奈、ゴメン待った?」

そこになんと例の女子バスのエース藤澤瞳が現れた。

掃き溜めに鶴とはこのことか?

いやいや、杏奈の名誉の為にも行っておくが、彼女だってそこそこ可愛い。


「あ、瞳!大丈夫だよ。クラスメイトと話してた。」


「お疲れ様。」

緊張MAXで気のきかないサラリーマンみたいな挨拶を返してしまう情け無いボク。


「お疲れ〜。あたし達喋ったことあったっけ?」


「ん、軽くね。俺、長崎尊。」


「そっかぁ。あたし藤澤瞳です。」


「瞳のこと、知らない男子なんていないってぇ!」

ここで杏奈が余計な口を挟む。美少女と口五月蝿い女友達、少女漫画でよく見かける絵に描いたようなコンビネーション。


ウンウン。でもボクも内心大きく頷く。


「やめてよね〜。何話してたの?」


「さっきの火事のこと。長崎が、空に引火したら大惨事になるって。」

女子ってやつは話の筋を随分と端折る。


「やだ怖ぁい!」

瞳が大袈裟に頬を抑える。


理解るの!?


「ね〜燃えカスになってみんな堕ちてくるんじゃないかって!」


「エー、うちの真上タンカーだよ!」


またソコ!?しかもめちゃめちゃヤバい奴キターっ!!


「燃えて堕ちてきたら火の海じゃん。超最悪だね?」

杏奈がさらっと返す。案外非道い奴だ。


「大丈夫だよ・・・たぶん。」

全然フォローになってないボク。


「きっとそうだよね!」

ポジティブ・シンキングな瞳がボクの言葉のどこで安心したのか素敵な笑顔を向けてくれた。


キミのその笑顔の為ならボクは死ねる。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る