第238話 困ったことになったら電話する

スーパーに買い物に出かけた。

店内で、知らない子供に突然タマゴのパックを投げつけられた。

キャッチできなかったので、タマゴのパックは俺にぶつかり、床に落ちた。

当然、タマゴは割れる。


親が出てきた。

もの凄い剣幕で、「買ったタマゴが割れた、弁償しろ」と詰め寄ってくる。

状況が呑み込めない俺、パニック。


幸い、現場を目撃していたらしい通行人が冷静に説明してくれたのだが、親は納得せず、騒ぎに店員が出てきて、俺たちはバックヤードに連れて行かれた。

通行人は善意で付き合ってくれた。


と言うか、連行された時点で、俺は涙目だったし、とにかく冷静ではなかったから、まともに話せる状態ではなく。

バックヤードでは、通行人が俺の代わりにいろいろ説明してくれ、その横で、俺は水を貰って抗不安剤を飲んでいた。


店員から身分証の提示を求められた。

障害者手帳を出した。

俺の様子がたぶん普通ではなかったことと障害者手帳で、親子は何かを察したのか驚いたようだった。

レシートの提示も求められていたが、レシートは無くしたとかでしどろもどろ。

突き詰めたところ、親子はタマゴを買ってはおらず、弁償代が欲しかっただけだと発覚したので、俺と通行人は解放され、親子は警察とお店に任せることになった。


とにかく冷静ではなかった俺は、助けてくれた通行人の連絡先など聞けなかったし、俺の連絡先も教えられなかった。


相方には、電話しなかった。

件の前に、今から帰るよと連絡を貰っていたから電車の中だと思ったし以前、何かでパニックになって電話した時「そんなくだらないことで電話してくるな」と言われたのを覚えていたからだ。


帰宅してから、でも落ち着かなかった俺は、「トラブルに巻き込まれてスーパーのバックヤードに連れて行かれたけど帰宅した」とSNSにヒトコト書いた。

そこに、相方が帰ってきたのだが、機嫌が悪い。

「何で電話してこないんだ」

と怒られた。


心臓バクバクさせながら帰ってきて、相方の顔見てほっとしたのに、怒られたことで俺はまた少しパニックになった。

「くだらないことで電話してくるな」と「何で電話してこないんだ」の差が判らない。

どんな時は電話したらダメで、どんな時は電話が必要なのか?

判断が出来ないのだ。


ヤンデレている友人に電話した。

義母さまにも電話した。


2人を挟んで話して、落ち着いて、『俺の主観で「困ったこと」になったら電話する』という指針を出してもらえた。


困ったことなど、今後は起きない方が良いのだが。

今度から、困ったことになったら余計なことは気にせずに電話しよう。

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