第217話 劣等感

このところ、調子は決して悪く無いものの、1人で居ると漠然とした焦りと不安でネガティブになりがちだった。

しかもその焦りと不安の正体は本当に漠然としていて、具体的には自分でも判らず。

判らないから、余計焦って不安になる悪循環。


昨日、友人たちと食事に行った。

他愛のない職場の愚痴などもこぼれ、でもそれは世間話の一環で。

だけど、俺にはクリティカルヒットだった。


いわゆる普通の社会生活を未だ送れていない引け目だったり。

もう4年も患っていながら、そしてその歩みは間違いなく良い方向に向かってきてはいるものの、先がまったく見えない苛立ち。

極端に低い収入に見合っていない出費。


そんなものが渦巻いて、俺の中でどす黒くなり。

それが、劣等感だと言うことには、しばらくたってから気が付いた。


刺激された劣等感は、不眠を呼んだ。

睡眠薬を増やしても、眠くならず。

また、寝たら悪夢にさいなまれそうで積極的に眠りたいとも思えず。


悶々としたまま、今朝を迎えた。


「暫くは苦しむと思う。」


ヤンデレている友人に言われた。

そして、友人と話しているうちに、自分の中に欲が育ってきているのを実感した。


それは、自立したい、というもの。


今は相方をはじめ、本当にたくさんの人に支えられて、何とかやっと立っているのだが。

対等になりたい。

いつまでも寄りかかって、ぶら下がっていたくない。


少し前までは、そんな悩みは無かった。

というより、その悩みを持てるほどの余裕が無かった。


抉るような痛みを伴って容赦なく襲ってくる劣等感。


苦しいけれど、逃げずに抱えよう。

それは俺が、確実に良くなってきた証でもあるのだから。

そしてたぶん、それは途方もない時間を使いながら、それでも徐々に薄まっていって。

いつか、俺が病人を卒業するとき、消えるのだろうと信じている。

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