第210話 避けていた電車

所用があって出かけていて、つい先ほど帰って来た。

出かけた場所は素直な路線で行けば電車で40分くらいの所なのだが、素直な路線はいつ乗っても大抵混んでいるのと、実は数か月前にその電車で痴漢にあって以来、とても怖くなってしまったので、往路は遠回りして1時間くらいかけて、別の路線を使った。


所用は仕事関係だった。

結果的に長時間にはなったが、とても楽しく良い時間をたっぷりと過ごすことが出来たことと、楽しみすぎてつい帰宅時間が遅くなったことが重なったので、帰路は勇気を出して避けていた路線を使ってみた。

タイミング良く、乗車駅始発&降車駅終点の短い区間が停車駅な電車に座って乗れたのも大きな要因の1つではあったが、途中下車せず、また降りてから吐いたりもせずに、無事に該当区間を乗り切れた。


満員電車ではなかったものの、乗っている間は頑張った。

乗るときは、勇気も出した。

だが、それは決して「無理して耐えた」訳ではなかった。

耐えたと言うには、余裕があり過ぎた。

怖いと思っていた電車に乗ったのに、余裕があったのだ。

そのことに僅かながら戸惑いすら感じつつ。

今、とても嬉しいと思っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る