第204話 花火と相方とヤンデレてる友人
近所の川で、そこそこ大きな花火大会があった。
家からは、玄関側から大輪が見える距離。
勿論音も大迫力で響く。
俺の家はマンションの6階で、毎年この日は隣家は玄関前にテーブルを出してきて家族そろって花火を鑑賞している。
のだが、子供がうるさい。
フォローしておくと、特別やかましいという訳ではなく、年相応のやかましさなのだが、俺には辛い。
今日も、玄関先で騒いでいる声が聞こえた。
怖かった。
花火は観たいと思ったが、玄関に近づくことすら怖く感じて、足がすくみ、家の中でしゃがみこんだ。
ら、相方からはっぱをかけられた。
「子供は怖いものじゃない、何が怖いんだ?」
「いつまでもウジウジしてるだけで終わらせていいのか?」
「ヤダヤダ言ってないで、立ち上がれ」
などなど。
子供の声も怖かったけど、怯えている俺に対する相方の態度と声も怖くて、半泣き状態になり。
デパス飲んで、豆腐のぬいぐるみを握りしめて、のろのろと立ち上がり、玄関に出た。
花火は綺麗だったが、子供は怖かった。
怖かったので、花火鑑賞は早々に諦め、気分を変えに相方と一緒に珈琲屋に行った。
珈琲は美味しかったが、店内は静かではなく、豆を焙煎している音も大きくて、それはそれで怖く。
いっぱいいっぱいになって、久しぶりにヤンデレている友人に泣きついた。
暫くメールでやり取りをした後、友人は電話をかけてきてくれた。
ある程度状況はメールで伝えていて、電話でも再度説明すると、友人は言った。
「キミを1番理解しているのは相方さんだよ。相方さんに強く言われて、キミが怖かったっていうのも判るけど、強く言われなかったら動けなかったろ?
今キミが怖い思いをすることよりも、今後においてまたキミが動けなくなることの方が、よっぽど問題だと思ったんじゃないかな。
これからも怖い思いするし痛い目にもあうよ、でも関節が痛くてリハビリするのに、痛いからって関節曲げないわけにいかんだろ?それと一緒。
それに、前と違って、今はそれに耐えられるくらいにはキミは回復してるから。」
電話がかかってきたときは、相方は運転中だったので、スマホのスピーカーをオンにして、相方交えて3人で話しながら。
実は俺は、相方の強い言葉と厳しい態度に、俺が怖いと感じていることを相方は判っていないんじゃなかろうかと感じたのだが、そうじゃなかったらしい。
「僕のこと1番判ってるの、ヤンデレてる友人くんかもね(笑)」
電話を切ってから、相方は苦笑していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます