第178話 線路沿い往復

先日から始めた、最寄駅まで線路沿いを歩く練習。

今日はカウンセリングの日で、電車で移動するから、折角・・・と言うにはそこまで気軽ではなかったものの、練習はしようと思ったので、往路、線路沿いを最寄駅まで歩いた。

最寄駅に行くこと自体が久しぶりで(普段隣の駅を使っているから)線路沿いを歩ききったこともなかったのだが、今日は頑張ってみた。


最寄駅までの道のりは、10分足らずなのだが、とてつもなく長く遠く感じた。

駅が近づくにつれ、どんどん怖くもなっていった。

それでも。

引き返したくなかったから、頑張った。


ドキドキしながら最寄駅について、改札を通るのもためらいを感じ、それでも、一生懸命ここまで来たのだからと、勇気を出して改札を通った。

久しぶりのホームでは、眩暈すら覚えた。

足もがくがくしていたから、かえってすぐに電車が来たのは幸運だった。

これが、発車直後とかだったら、5分とは言え次の電車を待つ間に、感情がいっぱいいっぱいになって、泣き崩れていたかもしれない。


電車に乗っているときは、ドキドキしていたのは変わらなかったけど、カウンセリングルームの駅についてから、時間をかけて歩いている間に、少しずつ落ち着いてきて。

時間は余裕を見ていたから、途中で喫茶店に入り、一休みし。

カウンセリングルームも、予約時間より30分早く着いた。


待合室では、ぐったりしていた。

それでも、カウンセリングでは前向きな話もできたし、話しているうちに落ちつけたので。

往路が頑張れたのだから、復路も頑張ってみようと思い。

挑戦してみた。


普段使っている駅のホームを電車内から見送った途端、心細くなり。

最寄駅についてから、折角なので売店でお土産を買ったりと、景気づけはしてみたものの、その道中は、怖かった。

あまりに怖くて、途中で出張中の相方に2回も電話したくらいだ。

あいにく、繋がらなかったのだが。


必死になって足を動かし、自宅に着いたとたん、力が抜けて玄関で座り込んだ。

玄関には、以前、玄関に近づけなくなったときからそこに鎮座している豆腐のぬいぐるみたちがにこにことした笑顔で佇んでおり、その姿にほっとした。

座り込みながら手を伸ばし、近くの豆腐を撫でてみた。

豆腐は相変わらず、にこにこしていた。

暫く撫でて、足がしびれてきて、そこで何とか気が落ち着いたものの、今度は立ち上がろうにも別の理由で立ち上がれなくなっており、這いずるようにしながら廊下を抜けてリビングに。

リビングでは、こつぶが必死になって、回し車の上に登ろうとしては滑り落ちていた。

暫く眺めているうちに、足のしびれも治ってきたので、改めてこつぶのケージを開けて、キャベツをあげた。

すぐに手に乗ってきて、もぐもぐ食べる姿に癒された。


「帰ってきたよ~。」


ヘロヘロな声。

それに返事はなかったけど、手のひらの上の、柔らかい毛玉は、とても温かくて、自然と笑みが漏れていた。


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