第112話 待合室にて
第111話に関連する話になる。
今回行った病院も、今の地元ではなく、電車とバスと徒歩を駆使してようやくたどり着けるところにした。
と言うのは、以前住んでいた街で、評判が良かった病院だからだ。
丁度14kmの散歩コースの途中にあるその病院まで、歩いていくことも考えたが、膝に重要な欠陥があったら困るので、電車とバスを乗り継いて、カバーできないトコロは歩いて・・・というコースになった。
待合室は、お年寄りが多かった。
また、昔からある病院なので、患者さんも常連さんが多いのだろう、耳の遠いと思われるおばあさん同士のたわいない会話などがあちこちでしており、その「雑音」は俺にとって耐えかねるものだった。
だから、薬も飲んだし、ウォークマンで自衛もしていた。
のだが、よりによって、人懐っこいおばあさんが俺に他愛無い話を振ってきた。
対応している元気はないが、かといって明らかに俺に話を振ってきているのにと思うと無下にも出来ず、ウォークマンの片耳を外して応対した。
そこで疲れてしまったのと、そもそも病院が混んでいて、待合室で1時間以上待たされたのとで、診察のときはぐったりしていて、お医者先生との会話も、俺が必要最低限だと思われる情報だけを提示し、先生がそれに補完していく、と言った問診になった。
いはく。
「問診票に14km歩いたって書いてあるけど、どこ歩いたの?」
「アスファルトです。」
「・・・・どこからどこまで歩いたのかな?」
「家から某ターミナル駅までの往路と、帰路は途中バスを使って、別のターミナル駅から自宅までで計14kmです。」
「靴は?」
「これです。」
「・・・ウォーキングシューズかな?」
「はい。」
と言った具合だ。
文字に起こすと、とても頭の悪い会話をしているのが良く判ったが、それで精一杯だったのだ、先生ごめん。
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