第59話 身だしなみ

メンタルヘルス科に行くと、程度や病名はそれぞれだろうが、心を病んでしまった人たちが待合室には大勢いる。

その中で、なんというか・・・俺自身、あまりこだわりなく、むしろ無頓着なのだが、そんな俺でも、もう少しどうにかならなかったのかと思わせる方がたまにいる。

多分、どうにもならないのだとは思う。

身だしなみにまで気を配る元気がないというか、回す気力がないというか、気にならないというか。

俺自身もあるいは、そう思われているかもしれないし、思われていてもあんまり不思議ではない。


俺自身の場合の話で、罹患者が全員そうだとは言わないが、面倒事が多くなる気がする。

今まで普通にしていたことが、面倒くさい。

省けるものなら省いてしまいたい。


例えば、化粧。

もともと好きではなかったし、スキンケアなんかも、特別な手入れはしてこなかった。

それでも、人前に出るときは一応、多少のメイクはしていた。

病む前までは。

今は、面倒くさくて、そしてそこまで回す気力がなくて、どこに行くにも基本ノーメイクになってしまった。

今月末には法事があるので、さすがにその席はどうにかしようとは思っているが。


例えば、髪の手入れ。

酷いくせ毛なので縮毛矯正をかけているのだが、その頻度が減った。

そして、以前は染めていたのだが、面倒くさくなってやめてしまった。

ゆえに、根元の癖と相まって、ボサボサになってきた。

だけど、美容院に行く元気がない。

そろそろ梅雨に入るので、その前には行っておきたいとは思うものの、美容師さんとどうでもいい会話をするのも面倒だし、今行っている美容院は妙に安くて助かっているのだが最寄駅の反対側なので、行くのが億劫なのもある。

(実は電車も怖いのだが、最寄駅は4話のエピソード以来、苦手意識がしみ込んで、ほとんど使っておらず、近寄ることも極力避けているので、電車に乗るにしても隣の駅からだし、その美容院に行くにはぐるっと遠回りしなければならない)


とにかく、今の俺は見た目にかける元気がない。

そもそもが大した見た目じゃないし、誰に見せなきゃいけないわけじゃないし、と思ってしまうのだ。


とはいえ、他人のふり見て我がふり直せ、と言う諺もある。

世間一般的に許容される、妥当なラインは保つべきなのだろう、本当は。


・・・他人様を見て、もう少しどうにかならなかったのだろうかと思う程度には、余裕が出てきているのだから、そろそろ自分の身だしなみもどうにかした方が良いのかもしれない。

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