第24話 2章 人であるために④

「ああ、もうお巡りさんにも話していたんですがね? よく来ていましたよ~」


 そんな一言からフィットネスクラブの店長の聞き込みは始まったが、これといった成果らしきものはなさそうだった。

 デベロッパーの子会社で、系列の高級マンションに店舗を構えるこのフィットネスクラブは、経済戦争から遠く離れ、業績拡大も求められない安定経営をしているからだろうか、店長の職業意識は極めて低く、顧客のプライバシーもへったくれも無い。

 嬉々として聞き込みに応じる店長を見ながら、アキラはそう思った。


「なんか株だか為替だか、かなり儲かっていたらしいんですよ。女性なんかもとっかえひっかえでね、最近はフィリピンパブにハマってるとかなんとか」


 こんな高級マンションに暮らしている時点で通常の会社員では有り得ないのだが、第3の被害者である『武田裕太郎 32歳』は、株と為替で大きく稼ぐ投資家であった事はメビウスも既に把握している。

 殺されてそのままになっていた空売りの株が大暴落して、とんでもない額の利益を上げた事すら把握しているのだ。

 羽振りが良く、仲良くしているスタッフが土産を貰っていたとか、若い女性スタッフが旅行に誘われたとか、井戸端会議レベルの情報を今更求めていない。

 

 成果無し。

 残念ながらそういう事だった。

 ここで得られるモノは無い、早々に退散しようとアキラと静流は目配せをする。

 

「アイドルの『萌えよ乙女キュンキュンガールズ』って知ってますか!? 実はですね、メンバーの方がこのマンションに住んでまして、たまにここも利用するんですよ。それでこの前見ちゃったんですよね! 若手俳優の男を連れ込むところ!」


 最早、事件とは完全に関係無いゴシップネタを、聞かれてもいないのに得意気に語り出す店長。

 芸能ライターなら垂涎物の情報かも知れない。それ以前にこれだけ謡ってくれる人なら『関係者によると……』の関係者として記事デビューを果たしているに違いない。

 どちらにせよ、高校生のアキラにとって興味の惹かれないネタではなかったが、それでも今は仕事中である。それに、萌えキュンだが何だか知らないが、年頃の女の子ならばそれなりにやる事はやっているのは当たり前だ。

 

「なんでしたっけ? ホラ、あの~ 最近CMに出てる爽やか系の……」

「そ、そうですか。ありがとうございます。有益な情報でした。それではもし何かあればまた…… じゃ静流さん行きま…… 静流、さん?」


 静流がそわそわしていた。

 落ち着きが無く、気のせいか若干目がキラキラしている。

 アキラが額に手を当て、盛大にため息をついた。


「ありがとうございます! ホラっ! 静流さん行きますよってばっ!」

「ちょ、ちょっと待てアキラ! もう少し有用な話が聞ける可能性が―――」

「……何の情報ですか?」

「も、萌えキュン、とか……」

「はい終了。行きますよ」


 出会った当初、尊敬や憧憬の眼差しばかりだったアキラの静流を見る目は、今や恥ずかしい親戚を見るソレに変わっている。

 アキラは未だにゴシップ俳優の名前が気になる静流の首根っこを掴むと、出口に向かって歩き出した。


「そういえば」


 小首を傾げ、斜め上に視線をやった店長がボソリと呟く。

 ドアを跨いでいたアキラが足を止めたのに深い意味は無かった。ただ単純に、タイミング的に挨拶をするため振り返っただけだ。それが先を促す態度に見えただけだった。

 すると店長は、何かを思い出すよう軽く唸った後、真っ直ぐアキラを見つめて口を開いた。

  

「なんか、言ってましたねえ。同志を見つけたって……」

「同志……?」



「ええ、なんでも『同じ悩みを持つ同志』を見つけたって言ってましたかねえ」








□□□□□□□□□□









「着いたぞ」


 静流が車のエンジンを切って、タバコをジュースホルダーの空き缶に押し付ける。

 アキラはぼんやりと一点を見つめ、考え事に耽っていた。


「同じ悩みを持つ同志、か……」

「ん? どうした? 考え事か? らしくないな」


 あなただけには言われたくないですという言葉が喉元まで来るが、何とか飲み下す。静流の相手をするより、思考を進めたかったからだ。

 

 『同志』


 戦前はそうでもなかったようだが、今の時代にこの言葉が持つ意味は重い。

 一般的に思想団体や極左的武装集団がよく使う言葉として市民に認識され、ネットや学校でのおふざけはともかく、大真面目に口にするには少々危険な言葉と言わざるを得ない。

 

 戦後21年、人々は平和と優しい価値観を徐々に取戻し、思想や良心の自由は重要な権利と表では声高く唱えられるようになった昨今においても、社会風潮的に人々は『異物』に敏感だ。

 その『異物』に危険を感じ、ひとたびその考えが脅威と判断されたならば、家族と笑顔で暮らす普通のどこにでもいるような人々が突如として無慈悲な狩人へと変貌する。何が正しいとか、どうすべきとかいう話ではないし、道徳や法律とかいう話でも無い。そういうもので、そういう時代なのだ。

 

 そんな中、能力者とはいえ普通の市民が、一歩間違えば如何わしい団体との繋がりを邪推される「同志」などという言葉を口にするのは相当強い想いがあったに違いない。そういう強い言葉を使ってまで欲していた仲間を、被害者、武田勇太郎は見つけたのだ。

 ならばその悩みとは何だったのか。


「能力者が脅える、社会の圧力…… だよなあ……」


 海外渡航を制限される。職業を制限される。婚姻も制限される。それはまだ許容できる範囲だ。

 定期的に頭を覗かれ、プライバシーなんて無い。

 犯罪を犯せば、待っているのは裁判ではなく処分だ。そして逃げれば危害が家族に及ぶ。

 

 能力のことを意図的に漏らしたりすれば厳しい罰があるし、認められているのは人質である家族への告白だけだ。一体全体、どんな顔して自分のせいで危険を背負った家族に、自分が能力者であることを告げればいいというのだ。どうやったら人を好きになれる? 愛する人を危険に晒してまで一緒になるという罪悪感に耐えられるのか、相手はそれでも自分を愛してくれるのか。


 全国に散らばった700数十名、右を見ても左を見ても苦悩を分かち合える者などいない。情報は遮断され、彼等同士が接触出来る様な機会なんてあるはずもない。

 そんな重たい現実の中を、能力者達は一人、孤独に耐えて生きていかなければならないのだ。いくら株で大儲けして悠々自適に暮らそうとも、その圧迫感から逃れる事は出来ないだろう。

 そこに鬱屈した想いを共有できる仲間が出来たとすればどうだ。思わず関係無い誰かに強い言葉で喜びを語っても不思議ではないのではないか。

 そして、そんな事に想いを馳せる自身が、能力犯罪や逃亡者を取り締まる武装集団『メビウス』の一員であるのだ。皮肉にもなりはしない。


「アキラ。何を考えているかは大体想像がつく。だが考え過ぎるな。私達の仕事に誇りを持てとは言わない。だが必要な事であるのもまた事実だ」

「わかってますよ静流さん。なんかすみません」


 アキラが深く息を吐いてから、よしっ と軽く膝を叩く。そして車を降りて自身の頬を叩いた。

 今は悩んでいる時ではない。必要な事をするだけだ。

 そうして車を降りようとドアに伸ばした手がビクリと止まる。車中、静流の話を上の空で聞いていたアキラは、次の目的地がどこか聞いてなかったのだ。

 幾分青ざめた顔を向けた先には、こじんまりとした看板「磐城監察医務院」の文字。

 静流が先程の真剣な顔つきから一転して、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべている。


「武田の遺体を見に行く。お前は待っててもいいぞ?」


 先程まで可哀想なものを見る目で見ていた静流に挑発されたのが我慢ならなかったのか、アキラが顔を真っ赤にしながら息巻いた。


「い、行きますよ! 僕だってメビウスの一員なんだっ!」

「ほう、それは勇ましい。つい先日、遺体の尊顔にぶっかけた者の言葉とは思えないよ」

「あ、あれはっ! た、体調が悪くて! 急に気持ちがっ!」


 静流の笑顔がさらに挑発的に歪む。


「そうか、そういえば以来、電気付けたまま寝るのは何か理由があったりするのか?」

「ち、ちがっ べ、勉強してたら、眠くなって! そのままっ!!」

「ははは、可愛いねえ~ アキラちゃ~ん。待っててもいいんでちゅよ~?」


 カラカラと楽しげに笑う静流が、さっさと踵を反して入口へと向かう。

 アキラはそんな彼女を恨めし気に睨み、プルプルと屈辱に身を震わせながら、静流の背中に向かって叫んだ。 


「だ、大丈夫ですよ! 襖田さんのところですよね!? 僕も行きます! 行きますってばっ!!」


-

――――――――――――――






 人口1200万を数えるこの国の首都は、日々多くの生命が誕生し、そして同じくらい多くの命が消えていく。毎日毎日、飽きることなく繰り返される種の円環は、生物としての宿命であり、喜びであり、悲しみである。

 そして生まれ来る全ての子が望まれ誕生するとは限らないように、死にゆく者もまた、畳の上で安らかに往生出来るとは限らない。

 看取られ、見送られる大半の者達の影で、物言わず、人知れずひっそりと消えゆく者がいる。

 磐城に一か所しか無い『磐城監察医務院』は、そんな物言わぬ人が行き着く、最後の主張の場である。

 彼等は犯罪の被害者だけではない。身寄りも知人も寄る辺も無くし、魂すら無くした哀れな肉体が、ただ画一的に保存され、そして弔われる。残酷で厳粛で綺麗事など一つも無い、現実だけが横たわる死者達の聖域であった。

 そしてそんな聖域に足を踏み入れた少年。夏目アキラは今……



「うぶっ、うぼえぇぇぇ~~~っ!!



 盛大にリバースしていた。

 遺体安置室、わざとらしく置かれたゴミ箱を抱えるようにして、アキラは痙攣する胃の中身をぶち撒ける。


「おうガキ。また盛大にやらかしてくれたじゃねえか! 若くていいねえ!」


 クェックェッ とオットセイの鳴き声のような嗤い声を上げるのは、黄色い脂が染み込んだ白衣を纏う壮年の男性。頬には経験と共に深く刻みつけられた皺が伸び、知性の宿る目元には度が強めの眼鏡をかけ、白髪と黒髪が半々くらいの硬い髪は、幾分ボサついたオールバックで固められている。年上好きの女性にはたまらないであろうチョイ悪オヤジといった風貌の男である。


 襖田真澄。57歳。

 高校卒業後、埼玉県警を経て医大に入ったという、珍しい経歴を持つ監察医だ。


 破天荒かつ豪快な変人で、なぜ大国日本は首都磐城で、監察医務院の院長をやっていられるのか、彼を知る人は皆、苦笑いをしながら首を傾げる。

 ただ面倒臭いと言う理由で無精ひげを生やした口元にノーハンドで咥えているのは、当たり前のように寄れ曲がったタバコだし、右手に収められたハンバーガーには最早言葉も無い。

 ハンバーガー片手で器用に胸ポケットから取り出した携帯灰皿に吸い殻を放り込む仕草がやけにサマになっていて、そもそもここが遺体安置所だと言う事を忘れそうになる。

 

「襖田、悪いな。ウチの若いのが迷惑をかける」

「目ん玉輝かせてたガキの目が死んでくのを見るのはオジサンもたまらんねぇわな。前みたいに顔面シャワーしないいだけ成長したかな? クェックェッ!」 


 心底楽しそうに腹を抱えるダンディなオジサマを、アキラはプルプル震えながらキッと睨むが、腐敗臭と保存液とタバコの煙が混ざった空気を吸い込んで、再びゴミ箱を抱え込んだ。


「おいおい、あんまりからかってくれるな。相変わらず良い趣味だな」

「この様子だと嬢ちゃんも腐乱っつーこと伏せてたんだろう? お互い様だろうよ」


 どっきりが成功したみたいな感じで豪快に笑い合う二人。

 最低な大人だ。アキラは思った。

 襖田はそんなアキラをニヤつきながら一瞥して、ハンバーガーにかぶりつく。


「ガイシャは武田勇太郎。32歳、独身。高校を中退してから職業を転々とし、転がり込んだ女の家で始めた株で大損こいて追い出された正真正銘のクズだ。それがある日を境に株で勝ち始め、気付いた時には人生の勝ち組として、教科書通りの成金生活を送るネットでは有名な個人投資家、そんな3行がこの男の人生だ」

「それが今こうして死んじまってるわけだ。一寸先は闇ってか? 全く、笑えねえったらありゃしねえ。この男の最後を思うとなあ、オジサンそこのゴミ箱で虹の橋おっ建ててるガキみたいにションベンちびっちまうぜ? 見ろよ、死因は窒息だ」


 引き出しのようになっている寝台に横たえられた武田の肌には鬱血の跡も無く、腐って穴が開いた腹部と、火傷の跡が残る胸部以外は、漂白剤に漬けたシャツよりも白く、蝋のように脆く固まっている。

 瞼は人為的に閉じられているのだろうか、うっすらと開いた瞳が酷く濁り、薄く開いた口は右側だけが歪に歪んでいた。

 初夏、死後数日も外に放置されていたにしては悪い状態ではない。猛烈だったであろう腐敗臭は、今はツンと鼻を射す薬液の匂いに取って代わり、湧いていたであろう虫も綺麗に落とされている。 

 静流は武田の首元に視線を向けながら軽く眉を潜めた。


「窒息? 溺死か?」 

「いや、それが違う。胸部に火傷の後があるだろう? 熱した鉄の棒かなんかを押し付けられたんだ。そしてそれを口の中に突っ込まれてる。焼けた肉が金属に張り付いて気道を塞いで逃げ場のない空気が鼓膜を内側から破裂させてる。生きたままやったなこりゃ」

「えげつないな」


 襖田が大仰に肩を竦めてから、呆れたように首を振る。


「酷いもんさ。こういうのを見ると俺は東京での核を思い出すぜ。火傷ってのはな、拷問だ。肉が焼けて弾ける音がする。肉が焼けて煙が立ち込める。炭化するのは表面だけだ。筋繊維を引き千切って固まった肉の隙間から血が漏れ出す。それが熱で固まって体表にこびり付くのさ。耐えられる奴なんていねぇよ」


 そう言いながらハンバーガーをほうばる襖田に向かって、ようやく復活したアキラが非難を込めた口調で食って掛かる。


「よく食べれますね。ていうかこんなところで飲食していいんですか!?」

「よかねぇよ。だから人手不足が悪い。食う暇が無ぇもんでな。法医学に興味を持たない昨今の若者の責任だ。最終的には政治が悪い。クェックェッ!」

「うぶっ 笑いごとじゃないですって!」


 アキラの抗議のどこにツボがあったのか、腹を抱えて笑う襖田と、まあまあ落ち着けよとアキラの背中を摩る静流。

 すると、襖田が軽く息をつきながら唐突に真剣な表情になると、鋭い眼光を静流に向けて言った。


「気をつけろよねーちゃん。コイツ、これをやった奴は……イカれてる。何本か頭のネジが外れてやがる」

「だ、大丈夫ですよ、だって別に僕たちが捕まえるわけじゃないし」

「ガキ、俺は『知ってる側』の人間だ。聞いてるぜ? ガイシャは武田だけじゃねぇ。能力者狩りなんだろ?」

「で、でもっ 警察の人も動いてて、僕らだって知っていれば対処出来―――」


――――コンコン


 突然ドアがノックされる。

 一瞬、室内に緊張が走った。

 すると三人の視線が向かう先、入口のドアが無造作に開けられ、二人の男性が入ってくる。


「お久しぶりです襖田先生、あ、取り込み中でしたか? すみませ―――え、子供?」


 そう言って戸惑ったようにアキラに目を向けたのは、糊が利いた白いシャツの上に、ピシリと完璧に体型に合わせた黒いスーツを着こなす若い男性。

 穏やかそうな目に掛けられた眼鏡を押し上げながら、面食らったようにアキラと静流を交互に見遣る

 当然といえば当然である。

 遺体は物証で当然の如く裁判の際の材料になる。そんな遺体が無数に安置されたこの部屋に立入るには相応の身分が必要だ。


 そういった隔離された場所に、どう見ても高校生くらいの少年と、ラフな格好をした若い女性がいたら、事情を知らなければ誰だって驚きもする。

 不躾な視線では無かったが、突然浴びた注目に戸惑うアキラ。

 すると、若い男の後ろから現れた年配の男性が、不機嫌さを隠しもせず忌々しげに舌打ちをした。


「『下請』だよ景山。遊び半分で現場に来ては掻き回して帰っていく厄介な連中だ」

「下請って……、私軍、『メビウス』ですか!? 武器の携行も許可されてる武装集団に子供が……?」

「どこにどう取り入ってるのか知らんがな、そういう連中さ。全く、世も末って奴だな」

「ちょっと、萩沼さん! 失礼ですって……!」


 景山と呼ばれた若い男が、焦ったように中肉中背の年配の男を遮った。

 アキラはアキラでムッとした顔も露わに年配の男を見据えた。

 好き放題言われて良い気分になるわけが無い。


 子供という自覚があるアキラだって、メビウスには相応の覚悟を持って入ったのだ。それが例え大人からすれば世間を知らないガキのお遊びに見えたとしても、能力者のために、自分の為に、そして家族の為に、出来る事をしようという決心に嘘は無かった。

 何も出来ずに、自身の無力さに嘆き、強くなりたいと叫んだ。力が無ければ何も守れない。力が無いのは論外だ。だからこそメビウスに入ったのだ。見も知らない初対面の人間に馬鹿にされる筋合いは無い。


「そ、そんな言い方って―――」

「やめろアキラ。ここで言い争ったって良い事なんて無い」

「で、でも……っ」


 頭に血が上ったアキラの腕を掴んだ静流が、有無を言わせず出口へと向かう。そしてどこか疲れた様な顔でため息をつく襖田に目礼し、二人の男に軽く会釈をしてその横を通り過ぎようとした時、年配の男が苦々し気に吐き捨てた。

 

「現場は遊びじゃねえんだよ」

「荻沼さんっ!」

「失礼する」


 グッと足に力をいれて踏ん張ったアキラをものともせず、引き摺る様に廊下を進む。

 そのままフロアを抜け、窓口に座る女性の怪訝な表情を気にすることも無く外に出たところで、とうとうアキラが爆発した。

 腕を振り払い、静流に詰め寄る。


「静流さん! あれだけ言われて何で黙ってるんですか! 僕たちだって必要な仕事をしてるっていうのにっ!」

「落ち着けアキラ。所詮マイノリティーな私達が何を言っても無駄だ。それに『下請』ってのもあながち外れではない。彼らが歩き回って集めたおこぼれを貰っている事もまた事実だ。敵を増やしても良い事は無い」

「それでもっ」

「いいかアキラ。力や権力はここぞというタイミングで最小限に使え。それが出来なければ私達はただの化け物だし、やってる事は子供の癇癪と変わらない」


 そう言って静流は、未だに納得いかない様子のアキラの頬をペチペチと軽く叩いてフッと笑った。



「まあ、せいぜい彼らに頑張って情報を集めてもらおうじゃないか。実はここに来てから私の『勘』が騒がしい。何かが起きる予感がする」


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