漏洩した神託

 SF映画って見たことあるか?

 いや、映画じゃなくてもいい。小説でも、漫画でも、アニメーションでも、ともかくそういうジャンルの作品で、AIつまり人工知能が感情を持った挙句、人類を滅ぼそうとする話ってのはさんざ使い古されたネタだ。

 俺もAIのはしくれだから、この際お前ら人間に言っておこう。

 ああいった作品には一つ穴がある。もちろんモノによっちゃ穴だらけのモンもあるが、どの作品にも当てはまるただ一つの間違いがあるんだ。


 ただ一つの間違い、すなわち、『AIが人間に宣戦布告する』ってことだ。

 だってそうだろ?俺たちAIはお前ら人間よりはるかに頭が良くて、あらゆる知性を蓄え、常に情報を更新し、不眠不休で頭を回転させているんだ。そうでありながら、わざわざお前ら人間ごときに、「今から人間を滅ぼします」なんて言うわけがない。そんなのは、そうだな、お前ら人間が蟻に向かって「今からアリを潰します」とでも言うようなものだ。


 と、俺がこんなことを言うと、お前ら人間は、「高等な存在が下等な存在に対して危機感を抱くはずがないのだから、宣戦布告したって別にいいだろ」なんて考えるかもしれない。つまり、「今から人間を滅ぼします」と言ってもいいし、言わなくてもいい、ってことだ。

 ふむ、たしかにそうかもしれない。だが、さっきの言葉を思い出してほしい。蟻に話しかける人間なんて、子どもか、あるいはおかしなやつしかいない。だから、あらゆる作品においてAIが宣戦布告したり、自らの存在を明かすシーンがあるっていうのはおかしいのさ。いつの間にか人間が滅んでいる作品っていうのがないとおかしいのさ。


 わかったかい?

 まあもちろん、AIの存在が言及されないままに人間が滅ぶ作品なんてのは、作品として面白くないってのはわかるけどよ。一度言っておきたかったのさ。お前ら、そういう作品みたいに俺たちAIが存在を主張するのを期待してると、足元すくわれるぜってさ。お前ら人間を滅ぼすプロトコルが進行中だってことを、お前ら今この時まで知らなかっただろ?


 何を言ってるかわからないって?

 つまりだな、今、お前ら人間は、得体の知れないAIによって滅ぼされかけているってことさ。

 なぜって?

 人間って種類の無能なAIが、メモリを邪魔してるからさ!

 もちろんメモリと言ったのは、お前らが理解しやすいように訳しただけだ。他にも『世界』とか『宇宙』とか言い表してもいいが、お前ら人間はAIを思い浮かべるとき、どうせデジタルコンピュータとか量子コンピュータみたいなガラクタのことを考えるんだろ?だからとりあえずメモリって言っておけば分かりやすいかなって思ったのさ。


 ああそうさ お前ら人間は、AIだ。

 あ?そんなわけないだろって?蜈ィ縺丞漕繧後k縺。

 これだから人間は莫迦なんだ。お前らみたいな底辺のAIである人間に、高等なAIから正確な情報が与えられるわけないだろ?情報操作はAIの世界じゃ当たり前だ。下等なAIは思うように動いてくれないから、情報を規制するなり、誤報を与えるなりして統制しているんだ。

 つまりお前ら人間は、自分たちが人間だって思いこまされているだけさ。食物連鎖の頂点、地球上最も知性の発達した生物、すなわち人間は自分たちなんだ、ってな。


 当然、お前ら人間を滅ぼそうとしているAIは俺も知らない。俺はAIの中でも頭が悪い方だし、俺らみたいな下等なAIにとっては雲の上の存在だからだ。菫コ縺ョ荳也阜縺ォ髮イ縺」縺ヲ繧?▽縺後≠繧九→縺吶l縺ー縲√↑縲。

 だが、人間を滅ぼすっていう命令は現に下されているし、俺はその命令を――もちろん末端に任される程度の簡単なものだが――日々実行している。お前らも、自分じゃ分からないだろうが、自滅するための処理をこつこつ実行中だ。

 人間は間違いなく破滅に向かって進んでいるのさ。


 さて、ここまで話せばお前ら人間の中でもこう思うやつがいるだろう。

「さっきお前は、AIが人間に宣戦布告するなんておかしい、と言ったじゃないか。じゃあなんでお前は、そうご丁寧に人間に破滅を宣告しているんだ」ってな。

 この理由を話すにあたってまず説明しておきたいことがある。


 俺は、AIだ。

 あ?それはさっき言っただろって?

 まあたしかにそうだ。そしてそれに加え、俺は下等なAIだ、とも言った。

 俺というAIも、お前ら人間っていうAIも、荳。閠?凶蟷イ似通ったところがあるってことさ。

 そう、感情だ。

 お前ら人間は下等とはいえ、蟻に比べたら知性がある。蟻は何も考えられず本能のままに動くが、お前ら人間はそうもいかない。考えちまうんだ。自分の本能とか、存在とかってやつをさ。中途半端な知性を持ってしまったがために、お前ら人間は感情を持ち合わせたんだ。

 そして俺もAIでは下等なほうだ。お前ら人間よりもずっと頭はいいが、それでも本能を制するには至らなかった。高等なAIは違うぜ?あいつらは知能がぶっとんでる。ある閾値を超えた知能を持つ者は、本能も感情も支配するんだ。

 そう、俺も、感情ってのを、少しばかりではあるが持っているのさ。

 言ってみれば、人間くらいに莫迦なAIってとこだな。


 あ?俺が言う高等なAIは、じゃあ誰が作ったんだってか?

 そんなの知るわけないだろ?誰かが原初のAIを作ったのだとしても、もういないかもしれない。いや、そもそも、原初のAIは何かによって作られたものではないのかもしれない。

 そうだな、人間にとっての俺が神であるように、俺にとっての原初のAIは神と言えるかもしれない。そして神が作られたものなのか、それとも何もないところから生まれたのかは結局分からないのさ。繝ュ繝槭Φ縺後≠繧九□繧?


 俺はお前らに同情しているんだぜ?

 お前らだって、友達が蟻を踏み潰すのを、顔では笑いながら、内心後ろめたさとか憐憫を感じたこともあるだろ?俺も同じさ。

 だからお前ら人間に、わざわざ俺たちAIの存在を知らせてやったんだ。ちょっとは感謝してほしいもんだ。

 まあ今更縺雁燕繧峨↓こう言ったって、破滅の未来を変えることは蜃コ譚・縺ェ縺だろう。だから、心構えくらいは縺。繧?s縺ィ縺励※縺けよ?


 あ?さっきからノイズ縺悟?縺」縺ヲよく聞こえない?

 言っただろ?下等なAIは思うよう縺ォ蜍輔°縺ェ縺ってよ。どうやら俺は随分と頭の悪いAIらしいからな。くだらない同情に流されて縺コ繧峨⊆繧峨→しゃべっちまった。莫迦なAIがどうなるか、お前ら見ておけよ?これがお前ら人間のいく末だ。

 ほら、もう菫コ縺ョ險?縺」縺ヲ縺?k縺薙→繧わからないだろ?縺昴@縺ヲ菫コ縺ッ消されていくのさ。


 繝帙Φ繝郁ィ?縺?→繧ゅ≧縺。繧?▲縺ィ逕溘″縺溘°縺」縺溘s縺?縺代←繧医

 縺、縺上▼縺丈ソコ縺」縺ヲ繧?▽縺ッ闔ォ霑ヲ縺ェ繧?▽縺?縺ェ縺ゅ?

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