飛翔

君よ

高く飛べ

その細い両足を踏ん張って

誰の思いよりも高く飛べ


君の

小さな背中には温かさが

柔らかな頬には軽やかさが

真っ直ぐな髪の毛には純粋さが

生まれ落ちた時から

宿っているのだから


だから

君よ

高く飛べ

どんな鳥でも見たことのない

高みへと

流れ星が脇をかすめるくらい

高く 高く飛べ


昨日なんて

その辺りの石で押さえておいて

明日なんて

壁に押しピンで止めておいて

いつかなんて

待っていないで

今すぐに

放たれた矢のように飛べ


大人になれば

もう帰れない思い出が出来るだろう

もう届かない憧れが分かるだろう

その前に

どこまでも思い描けるうちに

まだ真っ白な地平線が見えるうちに

その崖から飛べ


放物線を裏切って

頂点からさらに頂点へ

もっともっと

どこまでも高く飛べ


足元にしがみつく

昔々の物語が

蟻のように小さく見えるまで


背中に圧し掛かろうとする

愛情という巨大な牢獄の

突き破った天井が

小さな点に見えるまで


高く

高く

ひたすらに

高く

飛翔せよ


そして

辿り着いた

ただひたすらに金色の大空を

風だけが知っている

永遠に曇ることのない空を

君だけの住処とせよ

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