巨人たちの墓

橋の上をひかりに満たされた水槽の列車が

長く長く渡っていく

川面は暗くきらきらとうごめいた

列車がすぎていくローカル駅は白々と明るい

誰にも見送られることのない乗客たちの表情は暗く誰も動かない


今夜は月がない

星影も薄く

地上の光が立ち昇っている


昔々 暗闇の巨人たちがいた

今では彼らは小さくなってそこかしこに散らばってしまった

かつての繁栄はすっかりと失われた

乗客たちが見ている遠い高層ビル群こそ

林立する彼らの墓石だ


「夜が闇を連れて来た。けれどやがて闇は人工の明かりに薄められ追いやられて、片隅にひっそりと縮こまってしまった。小さくなってしまった闇は、かつての巨人の一族だった。だれひとりとして光に抗うことはせずに、ただ弱り続けた。そしてやがてバタバタと斃れていった。そしてあの巨大な墓だけが残された。」


暴かれた闇のそこには

ひるでもなくよるでもなくなってしまった

ただの時間だけが広がっている


やがて列車は静かに終点にたどり着く

人々はばらばらと降りていく


ホームを降り改札を出ると

猫が待っている

ふらふらとぼとぼと

足音のない猫の後をついていくだろう


乗客たちには帰る場所などないから

彼らはみんなずぶ濡れのまま

明日という駅まで歩いていく

その足どりはひどく重たい

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