ナイーブ

くものみえない秋のそらに ただ去っていく美しさがあり とどまろうとする残酷があり まるでいつもそうであるかのように ゆるやかに傾いていた


若い樹形がそうであるように 巡る季節がそうであるように 冷め始めた風がそうであるように 我らに内在する視線がそうであるように


踏みにじられるナイーブよ 嘲り笑われるナイーブよ なぜ芥子の花はそうでないか どうして百合の花はそうでないか そのままの無垢であることを恥もせず


盲目の少女が身を委ねた夜 歪められたカーブ 途切れた小径 見失った面影 閉じられた過去 見せかけの答え しかし そうして やがて まどろみから目覚めると まるでホームを離れる列車のように 追憶たちがふりかえりながら去っていくのが見える


この毒は甘い まるでいつもそうであるかのような かつてもそうであったかのような もどれはしない遠吠えの残響が聞こえる おだやかな狂気の声が狐のように後からついてくる まっしろで熱のない誰にも見えないひかりの後ろで 真昼の月は中天に届きそうだ

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