亡き少女のサクリファイス

少女

『前略

　生きている、と実感したのは、いつぶりだろう。すべての感情を失った二年前から、私は生きているけれど死んだも同然の抜け殻でした。

　感情が感情だとわかるのに少し時間がかかっちゃったけど、「私」はこうして生きています。

　君は変わったね。「俺に付きまとうな」って冷たくなって、勉強もしないで遊び呆けて。本当に私のこと忘れちゃったんだなって思ったよ。

　でも、根本って変わらないんだね。君は、冷たいけど、優しい面もあるし、勉強しなくてもそこそこの点は取れちゃうし。で、私に解説してくれるし。ずるいよ。これじゃ私、君のこと嫌いになりきれないよ。

　また、前みたいに一緒に笑える日は来るのかな。私はね、来るって信じてるよ。君はあと何年生きられるのかわからないけど、少なくともおじいちゃんにはなれないね。でも、その分、私は生きるよ。

　だから、君が忘れちゃった分と君が生きられない分、いっぱい思い出を作ろう。これ、強制だからね。

いっぱい笑って、ずっと一緒にいよう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　草々』