第4話「野宿」
天津は以前にも来たことがあるので問題はない。
あった。何処だ此処。バスの降車場所こんな場所だったか?
取り敢えずバスから降りてタクシーの声掛けを無視し2ブロックほど離れた場所でタクシーを拾う。
これにはちゃんと理由があって、バス降りてすぐの場所で客取りをしている運転手は大抵ぼったくる。経験から言えばほぼ間違いなく、だ。
こういう時は少し離れた大通りで拾うのが一番確実
結局ぼったくられた。そもそも大量の荷物を持ってる外国人な時点で逃げようがなかった。
しかも調子に乗ってチップまで渡してしまった。なんだ私は、ブルジョワ気分なのか。
色々と残念なところはあるが、なんとか目的地の大学に到着。ここまで来ればもう庭みたいなものだ。迷う心配も無い。さあここから私の華やかな留学生活、海外生活が始まるわけだ。
受付を行っている建物へ向かい、受付の女性二人に笑顔で話しかける。第一印象は大事だ。嘘だ。疲れていて表情はかなり険しかった。
「今日の受付はもう終わりましたよ」
女性はすぱっと言ってのけた。
え?
宿舎の手続きとかは?
「もういっぱいです」
え?
ちょっと…
え?
待て待て待て。確かに私は遅れた。それについては私に非があり申し訳なく思う。だがフライトの遅延については私がどうこうできる範疇にはないし、そもそも宿舎の部屋のキャパシティが留学生の数を上回るなんてことがあるのか?
色々聞きたいことがあるのだが、残念ながら今の時点で私にそこまで問い詰める中国語スキルは備わっていない。
では私は一体どうすれば?まさか初日でホテル宿泊なんて全く考えていなかったのでお金は必要最低限しか持ってきていない。両替しようにも銀行はすでに閉まっている。
…野宿か?街中で?
頭の中が、真っ白になった。
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