第3話「私は日本人だ」

着いた中国の空気は以前に来た時よりマシに思えた。





意外に思うかもしれないが、今後今作の舞台になる此処天津市は日本よりも気候的にはかなり過ごしやすい。





まず湿気がない。日本だと身体にへばりつくような湿気が夏をより苦しいものにしているが、天津だと風は涼しく、日陰にいれば夏でも気持ちよく過ごせる。





次に場所だ。すぐ上に北京という大都市がありながら、此処は沿岸に大規模な工業地帯があるだけで(日系企業が多い)栄え過ぎず、寂れ過ぎず、程よい場所である。




さて、なぜ私がこのような話をしているのかと疑問に思わないだろうか。現在空港にいる私は、飛行機を降りた所で既に30分立ちっぱなしだ。





シャトルバスが、来ない。





いや、確かに過ごしやすい気候だとは言ったが。かといって周りに日陰がない所に30分ずっと待機していれば色々と辛い。隣のおっさんは今にもキレそうだ。





結局来たのは30分と少し経った頃だった。フライトの遅延と合わせて1時間といったところだろう。





いくら温厚(自分ではそう思っている)な私でも、これは文句の一つでも言ってやりたい所だが、時間がない。大学の入学手続きを済ませる為に急がなくては。





因みに到着したのは北京で、バスに乗って天津に行くつもりだ。





迷った。





馬鹿な、空港内で迷うなんてことがあるのか?いや、あるのだ。何せターミナルが3つありターミナル間の移動もバス。しかもどのターミナルに天津行きのバス乗り場があるのかも全く分からない。行き当たりばったりな性格が早速露見してしまった。





だがそこは焦らない私。基本何とかなるだろうという超スーパー楽観タイプなので取り敢えず喫煙所を探し(中国で喫煙所を探すのはトイレを探すより簡単だ)ライターを借りながら情報収集をする。





待て、私は日本人だ。中国人ではない。言うなれば外国人だ。だから私の目の前で外国人ディスりを始めるのはやめてくれ、おっさん。





そんなこんなでやっとバス乗り場を見つけた私はチケットを買いに行く。





チケットを買ってすぐにバスが来たのでそのまま乗り込み一番後ろの座席に座る。嗚呼、やっとバックパックとキャリーケースを一時的ではあるが持たずに済む。





そしてバスに乗ること三時間弱。目的地の天津に到着した。

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