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yuka/1




 飯田街道。吹上付近。


 一時間くらい歩いていて


 歩くのは嫌いじゃないけれど、いっぱい考えたから疲れて。


 学校は今日も行かなかったから雨はパーカーのフードで避けて。



 横断歩道を渡っていたら信号待ちの白いハイエースがパッシングしてきた。


 運転席で二十過ぎくらいの男の人が笑いかけていた。


 あたしは眩しかったみたいに顔をしかめて通り過ぎた。



 少し歩いたら、後ろから男の人の声がした。


「家近いの? 送ってくよ?」


「もう近いからいいよ」


「どうしたの? 前に車に乗って何かあったの?」


 何で乗るのが当たり前みたいなこと言うんだろ。


「じゃあさエンジンだけ止めてくるから待ってて! エンジンつけっぱなしだからさ! そこで待っててよ、お願い!」


 男の人は振り返って叫びながらハイエースに走って行った。




「待っててくれたんだね」



「ここ座って話そ」


 男の人はスキンヘッドで長袖の白いVネックのサマーニットを着ていて首にゴールドの太いネックレスをしていた。普通の仕事の人に見えない。


「ほんとに何もしないし、送ってくよ?」


 良い人そーだけどほかのことは何も考えられない。


「ほんとに大丈夫?」


 あたしが立ち上がると男の人も立って笑った。


「これだけ言っとくけど」


 歩き出した男の人が振り返って言った。


「顔、ヤバいよ」


「すっぴんだし……歩いて疲れたし」


「そうゆう意味じゃなくって」


 男の人は最後にいちばんの笑顔で言うと、白いハイエースに戻って行った。



『顔がヤバい』とか落ち込むかも。


 じゃあ、なんで声かけたんだろ。


 疲れてひどい顔してたのかな


 心配してくれただけかな



 もしかして、わかったんじゃないのかな。




2000/05/11 15:20

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