第18話 伝説へ

 ホオリとホデリの兄弟喧嘩が一件落着すると、トヨタマビメがホオリとの子を産むために訪ねて来た。

 ホオリは鵜の羽根を使って産屋を建てることにした。

 ところが、まだ建設途中にもかかわらず、初産のためかトヨタマビメが予定日より早く産気づいてしまった。

 ビデオカメラを抱え、ホオリは出産の立ち会いを希望した。

「そんな恥ずかしい場面を撮らないで」

 トヨタマビメは立ち会いとビデオ撮影を拒んだ。

 そして出産は始まった。

「ひーひーふー、ひーひーふー」

 産屋からトヨタマビメの声が聞こえる。

 ホオリはどうしても決定的瞬間が撮りたくて、壁の隙間からこっそりビデオカメラを回した。

「ひーひーふー、ひーひーふっ!」

 レンズ越しにトヨタマビメとホオリの目が合った瞬間、

 ぶりっ

 トヨタマビメは赤ちゃんを出産した 。

 と同時にホオリは見てしまった。

 巨大なワニに姿を変えてイキむトヨタマビメを。

「だから、撮るなって言ったろ。日本語が通じないのか? お前」

 驚いてビデオカメラを落としたホオリに向かい、トヨタマビメは罵声を浴びせた。

「やってらんねえ」

 そう言い残し、トヨタマビメは海神国へ帰って行った。

 このとき生まれた子供が天津日高日子波限建鵜草葺不合命アマツヒコヒコナギタケウガヤフキアヘズノミコトであった。


 それでもトヨタマビメは我が子ウガヤフキアヘズの身は案じ、養育係として妹の玉依毘売命タマヨリビメノミコトを地上に送った。

「ウガちゃん。うふっ、可愛いい」

 タマヨリビメはウガヤフキアヘズに最大限の愛情を注ぎ大切に育てた。

「ウガちゃん」

「叔母さん」

「ウガちゃん」

「叔母さん」

「う、ウガちゃん」

「お、叔母さん」

「あ、あん、ウガちゃん」

「お、お、叔母さん」

「あん、あん、ウガちゃ~ん」

「お、叔母さん、叔母さん、叔母さーん」

 ウガヤフキアヘズの成長とともに、いつしかふたりは叔母と甥の関係を越え、肉体関係を結ぶ仲になっていた。

 そして、禁断の恋は成就した。

 ふたりの間には、

 五瀬命イツセノミコト

 稲氷命イナヒノミコト

 御毛沼命ミケヌノミコト

 神倭伊波礼琵古命カムヤマトイハレビコノミコト

 の四人の子供が生まれた。

 最後に誕生したイハレビコが初代天皇、神武天皇だと言われている。



 これより後、

 イハレビコ率いる代表チームは、八咫烏やたがらすの紋章を縫い付けた青いユニフォームをまとい、遠い国の強豪チームや隣国のライバルチームを相手に、快進撃を続けることとなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る