第13話 国造り(くにづくり)
オオナムヂは名前をオオクニヌシと改めた。
出雲国へ帰還したオオクニヌシの噂は瞬く間に広がり、八十神の耳にも届いた。
オオクニヌシをシメるため、直ちに大勢の八十神がオオクニヌシの元に押しかける。
「結局リンチの末、俺は殺されるのか」
オオクニヌシは泣きながら自分の運命を呪った。
八十神に取り囲まれたオオクニヌシは、せめてもの抵抗にとスサノオから奪ってきた生弓矢を取り出した。
軽くトリガーに触れる。
パパパパパパ
乾いた銃声と同時に、前列にいた八十神数名が血しぶきをあげて後方へ吹き飛んだ。
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
予期せぬ出来事に八十神は凍りついた。
「へっ?」
当のオオクニヌシも言葉を失った。
生弓矢とは最新式のガトリングガンだった。
「あんな道具、卑怯だろ……」
桁違いの威力を目の当たりにして八十神はかすれた声を出した。
我に返ったオオクニヌシは、次は慎重かつ冷静にトリガーを引いた。
パパパパパパ
「あべし」
「たわば」
「ぺいっ」
悲鳴を残し八十神が吹き飛ぶ。
確認のためもう一度、オオクニヌシはトリガーを引いた。
パパパパパパ
「あべし」
「たわば」
「ぺいっ」
またも同じく八十神が吹き飛んだ。
この瞬間、オオクニヌシはジワリと熱く込み上げるものを感じていた。
それは圧倒的な力と殺戮の快感だった。
「うわー」
「ぎえええ」
「助けてー」
一斉に逃げ出す八十神。
その背中めがけて、
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ
「ぎゃははは、死ね、死ね、死ねー」
歓喜の声を上げながら、オオクニヌシはガトリングガンの弾が尽きるまで乱射し続けた。
これを境に、高校デビューを果たしたヤンキーのように、オオクニヌシの態度は一変した。
今までのうっぷんを晴らすかのごとく八十神をイビリ倒し屈服させたのだ。
そしてオオクニヌシは国造りに着手した。
とは言え、基本的に学の無いオオクニヌシには、具体的に何から手をつけていいのか見当もつかなかった。
ある日、オオクニヌシが供を従え美保岬を歩いていると、海からガガイモ(マメ科の植物)が流れてきた。
オオクニヌシは小石を拾ってガガイモを狙って投げつけた。
ポチャン
外れた。
もう一度小石を拾って投げた。
ポチャン
また外れた。
供の神たちもオオクニヌシに続き、ガガイモめがけて石を投げ始めた。
ボチャボチャボチャンン
やがてそのうちのひとつがガガイモに当たった。すると、
「ぐわっ」と声がした。
よく見ると、小っさい神がガガイモにへばりつき溺れかけている。
オオクニヌシは小っさい神を助け尋ねた。
「おいチビ、お前は何者だ?」
「……」
小っさい神は答えなかった。
「チビ、何をしてた?」
「……」
「怒ってるのか? チビ」
「……」
小っさい神は黙秘した。
「このチビ、誰?」
オオクニヌシは
「この方は、カムムスヒ(※「天地開闢」参照)の子の
とクエビコは教えてくれた。
オオクニヌシが高天原のカムムスヒに確認すると、
「確かに私の子だ。小っさくてどこに行ったかわからなかったが……」
カムムスヒはスクナビコナが自分の息子だと認めた。
「へー、こいつ天津神なんだ。しかも結構血筋いいじゃん。小っさいのに」
オオクニヌシは意味も無く感心した。
「スクナビコナよ。オオクニヌシの国造りに協力してあげなさい」
カムムスヒはスクナビコナに命じた。
父親の命令なのでスクナビコナは渋々従った。
スクナビコナは黙々と働き国造りは進んだ。
特に医療や農業が発展した。
しかし、激務によりスクナビコナは身体を壊してしまう。
スクナビコナは永遠の生命を手に入れるため、海の彼方の
スクナビコナがいなくなり国造りは中断した。
「さて困った」
オオクニヌシがつぶやくと、海が輝き光に包まれ
(なんだ、このハゲ。眩しいじゃねーか。ザビエルか?)
目を細めオオクニヌシは光源をにらんだ。
「私はお前の幸魂、奇魂である」
オオモノヌシは神妙に告げた。
「なに訳わからんこと言ってんだ、このハゲ」
オオクニヌシが突っかかると、
「ハゲ言うなっ、ボケ。お前もじきハゲる」
怒りで光量を増しながらオオモノヌシは言い返した。
「で、何の用?」
オオクニヌシは両手で目を塞ぎながら尋ねた。
「私の御魂を御諸山(三輪山)に祀ったら、国造りに協力してやる」
オオモノヌシは高飛車に答えた。
眩しさで頭がクラクラし始めたオオクニヌシはどうでもよくなって、言われた通り御魂を祀ることを約束した。
そんなこんなで、オオクニヌシの国造りは他人の手で完成した。
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