第6話 誓約(うけい)

「母ちゃんに会いに行く前に、姉ちゃんにあいさつでもしていくか」

 ブオーン、パラパラ~

 スサノオのヤン車は騒音を立てながら、アマテラスが住む高天原に近づいた。


「アマテラス様、ご報告が」

 警察署長がアマテラスの元へやって来た。

「タチの悪そうなヤンキーがおりましたので、職務質問したところ……」

 署長は言葉を濁しつつ報告を続けた。

「自分はアマテラス様の弟スサノオだと騒いでおります」

 アマテラスは一瞬眉をひそめ、「私が対応します」とひとことだけ言った。


 別室で姉弟は久しぶりに対面した。

「姉ちゃん、久しぶり~っす」

 スサノオは無邪気に話しかけた。

「スサノオ、何しにいらっしゃったの?」

 平静を装い、アマテラスは穏やかに尋ねた。

「別に用事ってこともないけどさ。ちょっと姉ちゃんにあいさつをしにね。しばらく会ってなかったし」

 スサノオは軽い気持ちで答えた。すると、

「嘘つくんじゃねーよ」

 急にアマテラスの声色が1オクターブ下がり、

「高天原に、かち込みに来たんだろーが」

 アマテラスは立ち上がり叫んだ。

「はっ?」

 スサノオは口をあんぐりと開けた。


「なに因縁つけとんじゃあ」

 凄むスサノオ。

「てめえこそ、どういうつもりじゃい」

 返すアマテラス。

 ふたりは一歩も引かなかった。

「このままでは埒が明かないね。ここは一発、花札勝負で決めようじゃないの」

 アマテラスは提案した。

「上等じゃあ」

 スサノオも了承し、「勝った側の言う通りにします」と誓約書にサインした。

 そして勝負は始まった。


「猪鹿蝶、こいこい」

 アマテラスはニヤッと笑い、スサノオの十束剣をバリバリかじった。

 このとき、

 多紀理毘売命タキリビメノミコト

 市寸島比売命イチキシマヒメノミコト

 多岐都比売命タキツヒメノミコト

 といった宗像ムナカタ三神という三柱の女神が生まれた。

 

「ボケっ、こっちは五光じゃ」

 スサノオは札を叩きつけ、アマテラスの勾玉を噛み砕いた。

 このとき、

 正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミノミコト

 天之菩卑能命アメノホヒノミコト

 天津日子根命アマツヒコネノミコト

 活津日子根命イクツヒコネノミコト

 熊野久須毘命クマノクスビノミコト

 といった五柱の男神が生まれた。


 スサノオが勝った。

 そのため、誓約に従いアマテラスはスサノオに頭が上がらなくなった。

 スサノオはしばらく高天原に住むことにした。

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