第5話 禊祓い(みそぎはらい)
「しっかし、あの女ヤベーよな。蛆とか湧いとるし、無理無理」
そうつぶやきながら、イザナキは海で身体を洗い、穢れを落とすことにした。
身につけていた服や腕輪などから、
といった道の安全の神、十二神が生まれた。
海に潜ると、
海の神、
のワタツミ三神と、
航海の神、
のツツノヲ三神(住吉三神)が生まれた。
イザナキは最後に顔を洗った。そのとき、
左目から、
右目から、
鼻から、
といった
「なんか色々と疲れたから、あとはお前たちにまかせるわ」
イザナキは三貴子を呼んで言った。
「アマテラス、お前は高天原に昇って昼を治めてね」
「はい、お父様」
アマテラスは明快に返事した。
「ツクヨミ、お前も高天原に昇って夜を治めなさい」
「了解しました」
ツクヨミは神妙に答えた。
「スサノオ、お前はここに残って海原を治めなさい」
「チッ」
スサノオは舌打ちした。
「んっ? スサノオ、何か文句あるのか?」
イザナキが凄んでみせると、スサノオは「いいえ」と顔を背けた。
「まったく冗談じゃねーよ。なんで俺だけ下界に残んなくちゃいけねーんだ? しかも海なんてなんも面白くねーし。完全に貧乏クジじゃねーか」
スサノオは不満だらけで全く働こうとしなかった。
「大体さぁ、俺の母親って誰?」
スサノオはマザコンだった。
「親父の妻だから、俺の母ちゃんはイザナミってことになるよな。くっそー、会いてぇなー」
仕事の不満と母親への勝手な想い上げで、スサノオの心はすさんでいった。
嵐の神スサノオはバリバリと稲妻を轟かせ、連日バイクで走り回った。
その騒音に皆が迷惑した。
「スサノオ、お前は仕事もせずに何をしてるんだ? 毎日バリバリうるせーんだよ」
イザナキはスサノオを呼びつけ叱った。
「あ~ん?」
メンチを切り完全にヤンキーと化したスサノオはイザナキに食ってかかった。
「海なんてつまんねーんだよ。それよりも母ちゃんはどこだ? 母ちゃんに会わせろっ、クソ親父」
その言葉から、腐敗したイザナミの姿がイザナキの脳裏にフラッシュバックした。
「てめぇ、嫌なもん思い出させやがって」
イザナキは吐き気をもよおした。
「勘当だ、今すぐ出て行けー」
青白い顔になりながらイザナキは怒鳴った。
「上等じゃあ。あとで吠え面かくなよ」
どちらも直情型だった。
こうして、捨て台詞を残したままスサノオは立ち去った。
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