第4話 黄泉国(よみのくに)

「くっそー、イザナミが死んじまってムラムラする。あ~、セッ○スしてーよ~」

 性欲を持て余したイザナキはイライラしていた。

 イザナキはこの状況に耐え切れず、死者の国である黄泉の国へイザナミを取り戻しに行こうと決めた。


 黄泉の国前公衆テレフォン。

イザナキ「あ、もしもし」

チンピラ「はい、こちら『熟々女倶楽部』。本日はどういったご用命で?」

イザナキ「あの、イザナミさんをお願いしたいのですが」

チンピラ「かしこまりました。イザナミさ~ん、指名入りました~」

イザナミ「ご指名ありがとうございます。前にもお会いしましたか?」

イザナキ「俺だよ、イザナキだよっ」

イザナミ「げっ」

 思いがけない電話にイザナミは焦った。

イザナキ「会いたいんだ」

イザナミ「わたしはこっちの水に染まってしまったの。もうあなたとは住む世界が違うわ」

イザナキ「そう言えば、声も少し変わったね。喉が痛いの?」

イザナミ「ただの酒焼けよ。黄泉のお酒は稀代の銘酒なの」

 などと話をそらし、イザナミはイザナキの説得を断り続けた。

イザナキ「うっ」

イザナミ「どうしたの?」

 突然のうめき声にイザナミは戸惑った。

イザナキ「いっちゃた。テヘッ」

イザナミ「……」

イザナキ「お前の声を聴きながらシコってたら、我慢できなくて……。それなのに、まだ痛いくらいビンビンなんだ。お前とセッ○スしたい。お前だって同じだろ」

イザナミ(何してんだ、こいつ)

 そう思いながらも、イザナミの心はすでに固まっていた。

イザナミ「そこまで言うのなら。わたしだってめちゃセッ○スしたいし~」

 イザナキの熱意に負けイザナミは再会を決めた。

イザナミ「準備があるから、わたしがいいって言うまで見ないでよ」

イザナキ「うん」

 約束を交わしイザナキは受話器を置いた。


 イザナキはイザナミを待っている間、さらにもう一度射精した。

「あー、やっぱ我慢できねぇ。ちょっとくらいいいだろ」

 イザナキは少しの時間も待ちきれず、チ○コを握りしめながら店の入り口を開け、そっと中を覗いた。

 するとそこには、腐って妖怪に変わり果てたイザナミが髪をとかしていた。

「チェーンジ」

 イザナキは大声で叫んだ。

「見たなー」

 世にも恐ろしい姿でイザナミはイザナキを睨む。

「チェンジチェンジ。無理過ぎー」

 そう叫びながら、イザナキはフル○ンのままダッシュで逃げ出した。

「待てや、ゴラ~」

 イザナミはイザナキのあとを追いかけた。

「ひとをその気にさせといて、このチキン野郎~」


「おいっお前たち、先に行ってあいつを捕まえなっ」

 イザナミは、チンピラ(醜女シコメと八人の雷神)に命令した。

「は~い」

 チンピラは明るく答える。

 イザナキはチ○コ、ではなく十束剣を振り回しながら一目散に逃げた。

 チンピラに追いつかれそうになると、髪飾りや櫛を投げつけた。

 それでもヤバくなると道端に生っている桃の実とか、とにかく何でも投げて追っ手をかわした。

 どうにか黄泉の国の境に辿り着くと、イザナキは渾身の力で『千引の岩』を持ち上げ入り口を塞いだ。


 あと一歩のところで、イザナミはイザナキを取り逃がした。

「ぜーぜー、この野郎、恥をかかせやがって、許さねーぞ」

 息を弾ませつつもイザナミは凄んでみせる。

 しかし入り口が塞がっているのでイザナキに襲いかかることはできない。

「もういいよ。お前とは二度と会わねーから。帰れ帰れ」

 岩にもたれながら、イザナキは投げやりに言った。

「くっそー、こうなったらあんたの国の人間を一日に1000人殺してやるから覚悟しなっ」

 イザナミはヤケクソだった。

「はいはい、そんならこっちは一日1500人の子供を生んでやるよ~ん」

 売り言葉に買い言葉。

 ふたりは訳のわからぬ会話を交わし永遠に決別した。


 後にイザナミは死の国の神、黄泉津大神ヨモツオオカミになった。

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