第3話 天地開闢(てんちかいびゃく)

 イザナミを失い傷心のイザナキだったが、ここで二人が生まれる少し前まで時間を遡ってみよう。


 遙か昔、天と地が初めて分かれたとき、天の高天原に最初の神が現れた。その名を天之御中主神アメノミナカヌシノカミといった。次に高御産巣日神タカミムスヒノカミ神産巣日神カムムスヒノカミが現れた。続いて宇摩志阿斯訶備比古遅神ウマシアシカビヒコヂノカミ天之常立神アメノトコタチノカミが出現し、ドロドロだった大地は固まっていった。

 天地開闢の際に現れた五神は別天津神コトアマツカミと呼ばれ特別な存在であった。


 神話の世界をざっと表すと、

・高天原       =神の国

・葦原中国(中津国) =地上、現世

・根の国       =地下の国

・黄泉の国      =死者の国

 となる(異論あり)。


 話が進むにつれ中津国からも神が誕生する。これらは国津神(地祇)と呼び、高天原の神である天津神とは区別され、格下の神と位置づけられた。

 『天下り』という言葉があるので公務員で表現すると、天津神はキャリア、国津神はノンキャリアみたいなものだ。もちろん天津神の中でも地位があり、アマテラスやスサノオなどは事務次官レベルの高級官僚となる。それよりも更に格上の存在が五柱の別天津神であった。

 官僚の不正が当たり前のように、天津神にもDQNは数多く出現した。しかし別天津神に至っては欲など持たず、ただ国のために働き役割を終えると自然に消えていった。正に神と呼べる神であった。


 その後『神代七代かみよななよ』と呼ばれる神々が出現する。

 一代目、国之常立神クニノトコタチノカミ

 二代目、豊雲野神トヨクモノノカミ

 ここまでの神は性別がなく独り神と呼ばれる。三代目以降は双び神といわれ男女ペアで出現し、次第に人間の形になっていく。

 三代目、宇比邇神ウヒヂニノカミ須比智邇神スヒヂニノカミ

 四代目、角杙神ツノグヒノカミ活杙神イクグヒノカミ

 五代目、意富斗能地神オホトノヂノカミ大斗乃弁神オホトノベノカミ

 六代目、淤母陀琉神オモダルノカミ阿夜訶志古泥神アヤカシコネノカミ


 そして最後七代目に現れたのがイザナキとイザナミである。


「大地をしっかり固めて国を創りなさい」

 別天津神は『天沼矛あまのぬぼこ』を手渡し、イザナキとイザナミに命じた。

 ふたりはまず『天の浮橋』と呼ばれる雲に降り、そこからまだドロドロだった海に矛を突き刺しグルグルとかき回した。すると淤能碁呂島おのごろしまといわれる日本最初の島ができた。

 ここからふたりは国創りを始めることにしたのだった。

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