アリスのティーパーティー

「もうひとり呼んでおいたんだけど。」

ティーパーティーの招待客が増えていく。持ってきたお茶菓子のマドレーヌは数が足りるかしら?


「そうだったの?どなたを呼んだの?」


「眠りうさぎって奴なんだけど、マイペースな性格だから、来ないかも知れないし、先に始めてようか。」


「待ってなくていいの?」


「いいさ。どうせ今頃また寝てるかもしれないからね。そういう奴なんだ。さ、始めよう!」

エリックがキョロキョロ見回しながら諦め顔で返答する。


「では、そうしましょう♪」

私は敷物の上に部屋から持ち出してきたティーカップやポットを並べ始めた。大丈夫、お茶菓子のマドレーヌもまだ沢山ある。


「お嬢さん、いやアリスだったね。アリス、君にいいことを教えてあげよう。あの隅のあたりに背の低い植物が生えているだろう?」

レオンが長い長い舌を伸ばして方向を指し示す。


「ええあるわね。」

私は彼の言う方を振り向きながら頷く。


「あそこのグリーンは、ここの住人のグルメな世話好きヤギのバアさんが育ててるハーブなんだ。今日も我輩から声を掛けておいたんだけど、あいにく本業のチーズ作りがご多忙らしくて、手が離せなくてね。代わりにお茶会で好きなだけハーブを摘んで使ってくれていいとさ。君にも宜しくと伝言を言付かってきたよ。」


「ハーブですって?まぁ嬉しい!ハーブ・ティーって大好きよ。本当はお茶会では、ハーブ・ティーを淹れたかったのだけれど、丁度ハーブを切らしてしまってたの。ヤギおばさんに有り難く使わせていただきますって、私からのお礼を伝えておいてね!」

私は本心から礼を言った。


「判った。ちゃんと伝えておくよ。」

レオンが大きな目でぱっちりウインクする。




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記憶の国のアリス 赤松 帝 @TO-Y

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